転職は永住申請の許可不許可に影響する?

転職は永住申請の許可不許可に影響する?

今日のおはなし

永住希望者は転職のタイミングに注意!

永住申請は、居住要件として原則10年日本に住み、うち5年以上は就労資格をもって仕事をしていることが要件となっています。
長く日本で仕事をしていると、所属している会社に不満が出てきたり、あるいは、より良い給料や待遇、もしくはやりがいなどを求めて、転職を考えるという方も少なくありません。

大手人材紹介会社が2022年に行った転職理由調査では、転職の理由として多いものとして以下が挙げられていました。

転職理由ランキングTop10
  1. 給与が低い・昇給が見込めない
  2. 昇進・キャリアアップが望めない
  3. 会社の評価方法に不備があった
  4. 社内の雰囲気が悪い
  5. 肉体的または、精神的につらい
  6. スキルアップしたい
  7. 業界・会社の先行きが不安
  8. 社員を育てる環境がない
  9. 労働時間に不満(残業が多い等)
  10. 尊敬できる人がいない

どれも転職理由としては十分に理解できますし、転職自体は悪いことではありません。
ただ、永住を希望するのであれば、今日のお話しする内容を聞いて、本当に転職した方がよいのか、転職するタイミングはいつがベストなのか、じっくり考えてみてください。

転職した場合、前職の職歴と転職先の職歴は合算できますので、就労5年の要件はリセットされるわけではなく、居住要件としては永住申請の要件に影響はありません。ただし、何度も職を転々としている場合には、安定性がないと判断され、不許可リスクが上がるなどネガティブな要素もあります。また、転職のタイミングには十分な注意が必要です。

転職⇒1年以上新しい会社で勤続+更新申請⇒永住申請

例えば「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格をお持ちの方が転職し、転職後に新しい会社で1年以上勤続、かつ、転職後に更新申請をして無事許可を得てから、永住申請をする場合です。

この場合には、永住申請にネガティブな影響は与えないと考えてよいでしょう。

転職⇒就労資格証明書交付申請+1年以上新しい会社で勤続⇒永住申請

例えば「技術・人文知識・国際業務」などの就労資格をお持ちの方が転職し、転職後に就労資格証明書を得て、新しい会社で1年以上勤続し、永住申請をする場合です。就労資格証明書とは、転職先の会社での業務が、現在の在留資格に該当していることを証するものです。更新申請をして許可をもらっている場合には不要の証明ですが、更新まで在留期間が長く残っている場合などには、転職後に申請し、取得しておきましょう。

この場合も、就労資格証明書があり、かつ、1年以上勤続しているため、永住申請にネガティブな影響は与えないと考えてよいでしょう。

転職後1年以内に永住申請

転職後1年勤続していない場合には安定性があるとは認められないため、永住許可は厳しくなります。ただし、永住は総合的に判断されますので、転職により年収が前職よりも100万円以上上がっている場合や、年収の要件や居住年数10年の要件を大幅に上回っている場合などには、許可の可能性はあります。もしこのパターンで永住申請に踏み切る場合には、就労資格証明書は必ず取得しておきましょう。

永住申請中に転職

原則、申請後は結果がでるまで転職しない方が無難です。
もし、申請中に転職してしまった場合には追加書類を提出し、結果を待ちましょう。

提出すべき追加書類の例
  • 在職証明書
  • 雇用契約書・雇用条件通知書
  • 会社概要が分かる書類
  • 任意資料提出の理由書
  • 就労資格証明書
  • その他、年収見込みや賃金が分かる書類など

永住希望者における転職のデメリット

現在仕事で抱える不満を解消する手段として、転職は有効な手段です。
ただ、永住申請を検討している場合には、転職によるデメリットも考えられます。

例えば、転職によるデメリットは以下のようなものが挙げられます。

安定性に欠けると判断される

職を何度も変えていたり、現在の職の勤続期間が短いと、安定性に欠けると判断されやすくなります。独立生計要件(独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること)の「安定した生活が見込まれること」という要件を満たせなくなり、審査が厳しくなります。最低でも転職後1年間は勤続してから永住申請をすることをお勧めします。また、転職先の業務でも在留資格の該当性を満たしていることを示すため、転職後には就労資格証明書交付申請を行いましょう。

転職後の更新申請で3年以上の在留資格が取れるとは限らない

永住申請をするには、「現に有している在留資格について最長の在留期間をもって在留していること」という要件があり、当面の間は3年以上の在留期間があれば、最長の在留期間をもって在留しているとみなされることになっています。しかし、転職後の更新申請は通常の更新申請とは異なり、新規扱いとなりますので、転職後の会社の状況などが総合的に判断され、更新した後に同じように3年以上の在留期間がもらえるとは限りません。3年以上の在留期間がないと永住申請は要件を満たしていないことになり、不許可となってしまいますので、転職前に永住申請をするのはリスクが伴います。

転職による独立生計要件の未達

転職をするために休職や無職だった期間があると、その分年収に影響します。年収・所得については原則直近5年間が見られますので、転職した年は年収の要件を満たせなくなり、結果永住申請が遅れてしまうことも少なくありません。また、東京都など平均賃金が高い地域から平均賃金が比較的低めの地方勤務者となった場合でも、独立生計要件の年収最低ラインは変わりませんので注意しましょう。

転職による公的義務要件の未達

公的義務の要件とは、「公的義務を適正に履行していること」という国益要件のひとつです。具体的には次の3つを全て期限内に行っていると認められることで、要件を満たすことができます。

  • 住民税・国税等の納税義務
  • 公的年金・公的医療保険の保険料の納付義務
  • 入管法上の届出義務

転職をすると、前の会社を退職してから転職先の就業日まで空白期間が生まれることがあり、この期間は社会保険から国民年金・国民健康保険に切り替えて保険料を支払うことになります。また住民税なども、いままで給料から天引きされていた場合などは、退職後にご自身で払うことになります。この税金や保険料等の支払いは公的義務として定められていますので、納めることは当然として「適正に履行」されていることが永住許可の条件となります。そのため、期限を過ぎてしまうと永住審査上不利になりますので十分に注意しましょう。

また、入管法上の届出も公的義務とされています。在留資格にもよりますが、所属機関に変更が生じた場合には届出が必要な場合がありますので、確認しておきましょう。

転職活動による就労期間要件の不足

居住要件には、来日後10年以上引き続き日本に住んでいて、その内5年以上就労系ビザで働いている必要があります。つまり、原則的には最短で10年日本に住んでいれば永住申請ができるということになりますが、例えば途中で2度転職し、転職先で就労が始まるまで働いていない期間がそれぞれ約3ヶ月程あった場合には、その期間を就労期間として含めることはできませんので、転職をしていない場合に比べて6か月程永住許可要件を満たすのが遅れてしまいます。

転職しても給料が上がらない場合、永住申請にネガティブな影響を与えることが多いです。

転職は、永住許可の結果がでるまでは我慢した方が無難ですが、もちろん、最終的には「転職で得られるもの」と「永住者となること」を天秤にかけて、本人が決めるべきです。弊所にご相談いただいた場合には、ご本人様の意向に沿ったサポートをさせていただきます。

また、次項でお話するキャリアアップ転職であれば、ネガティブな要素にはならないとされています。

キャリアアップ転職とは?

転職して、給料や地位が上がることをキャリアアップ転職といいます。ここまで、転職は永住申請に不利になると紹介してきましたが、100万円以上のキャリアアップ転職であれば、ネガティブな影響を与えないと言われています。

また、転職後は転職先で1年以上勤続してから永住申請すべきと話しましたが、これも、100万円以上のキャリアアップ転職であれば、1年未満でも可能性があります。ただし、転職してから更新申請を行う前に永住申請する場合には、必ず転職後に就労資格証明書交付申請を行い、就労資格証明を受けてから永住申請をしましょう。

この話をすると、100万円未満、例えば50万円~70万円ほどの給料がアップする場合はどうなのか、といったご質問がよくあります。永住審査は総合的判断と言われますので、その他の個別具体的な事情から個別に検討・判断するのが確実だと思いますが、基本的には、100万円未満の転職であれば永住申請を優先し、永住許可が出てから転職をおすすめしています。

身元保証人の転職について

永住申請には身元保証人が必要です。

身元保証人は、申請人が永住するに当たり、本人が日本に在留中、法令遵守と公的義務を適正に履行するために必要な支援を行うことを保証することを書面にて宣誓します。身元保証人が転職した場合はどうでしょうか?

身元保証人は、日本人もしくは永住者の方がなることができます。あくまで道義的責任を負うものとして、法的な責任は問われません。しかし、必要に応じて経済的な保証と法令順守の指導を約束することになりますので、安定的な収入があることが求められます。

もっとも、年収について明確な金額は設定されていないので、身元保証人の収入が低くても、生活できていれば永住審査にマイナスな影響はないと言われています。身元保証人としては、収入額よりも定期的な収入があることの方が重要となります。

身元保証人についてさらに重要な点は、身元保証人が納税義務を果たしていることです。少なくとも「住民税」の滞納が無い方に身元保証人となってもらう必要があります。

永住申請後(永住審査中)に身元保証人が転職した場合、少なくとも以下の身元保証人の条件を転職後も満たしておけば、永住にネガティブな影響はないと思われます。

  • 安定収入があること
  • 納税義務を果たしていること

逆に言えば、安定収入が認められない場合や離職したことにより税金を滞納している場合などには永住申請に不利に働く恐れがありますので、注意が必要です。

まとめ

今日のおはなし