我が国への貢献とは?特例による永住申請の許可・不許可事例
我が国への貢献とは?特例による永住申請の許可・不許可事例
我が国への貢献による永住許可事例
今日は、出入国在留管理局が公表している永住関係の不許可事例を見てみましょう。
永住許可が許可されるための重要な要件のひとつである「居住要件」では原則10年以上日本に居住することが求められていますが、居住年数が10年に満たなくても、特例的に永住申請が許可されることがあります。
その中のひとつに「日本への貢献があると認められた場合」があり、具体的には、「外交、社会、経済、文化等の分野において日本への貢献があると認められた方」は、5年以上日本に住んでいれば居住要件を満たすことができます。
日本への貢献については、下記ガイドラインにて分野ごとに具体的な説明がありますので、確認しましょう。
不許可事例が公表されているのは、この「我が国への貢献による特例」についての不許可事例です。当初より「基準が曖昧なため明確化すべき」、「許可・不許可事例を公表すべき」との指摘があり、永住希望者の許可要件の予見可能性を高めるために、実際の事例を追加・充実することになっています。本特例に当てはまっているとして永住申請が行われたもののうち、これまでに許可・不許可となった事例を紹介します。
科学技術研究者として活動し,科学技術誌に研究論文数十本を発表した実績が我が国の科学技術向上への貢献があったものと認められた(在留歴9年5月)
我が国のアマチュアスポーツ選手として活躍し,その間にW杯への出場やスポーツ指導者として我が国のスポーツの振興に貢献があったものと認められた(在留歴7年7月)。
音楽分野の大学教授として我が国の高等教育活動に従事し,その間,無償でアマチュア演奏家を指導するなど我が国の教育や文化の振興に貢献があったものと認められた(在留歴5年10月)。
日本文学研究者として勲3等旭日中綬章授賞のほか各賞を受賞し,文学の分野での貢献があったものと認められた(通算在留歴9年,入国後3月)。
長期間にわたり我が国の大学教授として勤務し,高等教育に貢献が認められた(在留歴7年)。
大学助教授として我が国の高等教育活動に従事し,その間,科学技術研究者としての成果も顕著であり,多数の科学技術誌への研究論文の掲載の他,各種学会,研究グループの指導等を行い,我が国の産業,教育等の分野に貢献があると認められた(通算在留歴9年5月,入国後7年11月)。
システム開発等の中心的役割を担う立場として顕著な実績を挙げており,その実績は高く評価されていることから,我が国の情報技術産業に貢献が認められた(通算在留歴10年9月,入国後6年)。
長期間にわたり在日外交官として勤務し,国際関係分野において貢献が認められた(通算在留歴6年3月)。
本邦での研究の結果,多数の学術誌に掲載し,国際会議での招待講演を要請される等,その分野において国際的に認められている他,国内の企業・研究所との共同研究に携わっており,我が国の学術・技術分野に貢献が認められた(在留歴7年9月)。
我が国の大学助手として4年以上勤務しており,高等教育活動に従事しているほか,派遣研究員として第三国で研究活動を行う等,研究面においても一定の評価があることから,我が国の学術分野において貢献が認められた(在留歴7年3月)。
どの許可事例も、在留歴は10年に満たないですが、一定の貢献が認められたとして許可になっています。
個別具体的な事情を総合考慮して許可を出しているため、一概には言えませんが、現在大学教授や研究員として日本で活動を行っている方は特例が認められやすい傾向にありますので、相談・チャレンジしてみても良いかもしれません。
我が国への貢献による永住不許可事例
続いて、不許可事例を見てみましょう。
日本産競走馬の生産・育成,輸出,馬産農家経営コンサルタント,講演等を行っているとして申請があったが,入国後1年半と短期であることから不許可となった。
画家として多数の作品を製作・保有し,美術館の建設後に寄贈するとして申請があったが,在留状況が良好とは認められず(不正な在留に関与),不許可となった。
外国人の子弟の教育を行う機関において教師の活動を行っているとして申請があったが,当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないものとして不許可となった。
約1年間,高校で教師をしている他,通訳等のボランティア活動を行っているとして申請があったが,当該活動のみをもって社会的貢献等には当たらないとして不許可となった。
本邦で起業し,当該法人の経営を行っているが,その投資額,利益額等の業績からは顕著なものであるとはいえず,我が国経済又は産業に貢献があるとは認められず,不許可となった。
大学で研究生として研究活動を行っているが,教授等の指導を受けて研究している通常の研究生,学生等の範囲内での研究活動であり,研究分野において貢献があるとまでは認められず,不許可となった。
投資関連企業の課長相当職にある人物であるが,当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず,他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。
システム開発関連企業の課長補佐相当職にある人物であるが,当該勤務のみをもって我が国経済に貢献があるとは認められず,他に貢献に該当する事項もないことから不許可となった。
約9年間,本邦に在留し,作曲活動や自作の音楽作品発表会を行い,我が国と本国との音楽分野における交流に努めているとして申請があったが,文化・芸術分野における我が国への貢献とは認められず,不許可となった。
約9年間,本邦に在留し,我が国の芸能人による本国での公演の実現,我が国と本国の企業交流にかかるイベント実現等を理由に申請があったが,我が国への貢献とは認められず,不許可となった。
不許可事のなかには、そもそもの要件(素行が善良であること、5年以上日本に住んでいることなど)を満たしていない場合が見受けられます。特例を利用する場合でも、永住申請には万全の体制で臨む必要があります。社会貢献の内容については個別に判断されるため判断が難しい部分があると思いますが、ガイドラインをよく読んで、自己申請の場合でも特例の適用に最低限必要な条件は満たしてから申請しないと当然不許可となるので、十分注意しましょう。