一挙公開!永住申請で不許可となった事例集

一挙公開!永住申請で不許可となった事例集

今日のおはなし

外国人実務事例集からの永住不許可事例

今日は、永住不許可事例として専門書籍などで公開されている実例をもとに、永住申請の不許可原因についてお話していきます。

Case1:永住申請中の休職・転職で年収要件未達により不許可

はじめに紹介するのは、在留資格「技術・人文知識・国際業務」からの永住許可申請での不許可事例です。

申請人の略歴
  • 2005年:初来日、以降13年間日本に在留
  • 2013年:日本の大学を卒業
  • 2013年:ベンチャー企業に通訳翻訳の正社員として就労(技術・人文知識・国際業務)
  • 2016年:要件を満たしたと判断し、永住許可申請
  • 2017年:妊娠・出産のため退社
  • 2017年:出産のため一時帰国
  • 2017年:源泉徴収税額1,000万円以上の企業に中国人従業員の指導管理者として入社
  • 2017年:永住不許可

不許可理由として指摘されたのは以下の通りです。

  • 休職期間の収入がないため年収が低い
  • 計画性がない

また、年収が低いと判断された原因には、生計要件の理解がきちんとされていなかったことが挙げられます。申請人には配偶者がおり、配偶者もアルバイトとしての収入があったため、不自由なく生活できていましたが、家族滞在の配偶者の収入は生計要件の年収としては加算されない点を入管担当者より指摘されています。

また、事情があるとはいえ、永住許可申請中の休職や転職である点もネガティブに働きました。

Case2:13年前の偽造パスポートでの入国が原因で不許可

続いて、「技術・人文知識・国際業務」から永住許可申請での不許可事例をもうひと事例紹介します。

申請人の略歴
  • 2004年:初来日、2014年まで更新(技術・人文知識・国際業務)
  • 2014年:在留期間3年となったため、配偶者・子も同時に永住申請
  • 2015年:永住不許可
  • 2016年:再度永住許可申請
  • 2017年:再度永住不許可
  • 2017年:更新申請
  • 2017年:更新も不許可となり帰国

2度の永住不許可があり、その後の更新申請でも不許可となっている事例です。
永住の審査過程で、最初の来日時に偽造パスポートで入国していたことが判明し、不許可となりました。結果、一家で日本を離れることになりました。

このように、永住審査では来日から現在まですべてが審査範囲に含まれ、いままで明らかになっていなかった事実も明らかになります。しっかり正しいビザ申請歴を積み上げていないと、永住権を取得するのは難しいと言えるでしょう。また、万が一審査官が見逃して永住許可を出したとしても、偽造パスポートで来日したことがわかれば取り消される可能性は十分にあります。

Case3:配偶者の税金滞納と扶養家族が適切でないことによる不許可

在留資格「日本人の配偶者等」からの永住許可申請の不許可事例です。

申請人の略歴
  • 2001年:短期滞在で入国後、不法残留
  • 2002年:不法残留のまま日本人と結婚
  • 2003年:不法残留のまま日本人との間に子が生まれる
  • 2003年:在留特別許可にて「日本人の配偶者等」の在留資格を取得
  • 2014年:永住申請
  • 2014年:永住不許可

不許可理由として指摘されたのは以下の通りです。

  • 配偶者の住民税・固定資産税の滞納
  • 在外扶養家族が12名と多すぎること

ちなみに、本件は永住不許可から4年後の2018年までに税金完納の証明と扶養人数を配偶者との間の実子のみにするなど、要件を整えて再度永住申請し、2019年に許可となっています。

しかし、扶養家族を大幅に減らした理由については何度も合理的な説明を求められており、また、同世帯家族の固定資産税の滞納まで調査が及んでいるなど、かなり慎重な審査がなされていることが分かります。許可を出しづらい背景には、やはり当初から不法残留など素行や国益要件に係るネガティブな印象を与えてしまっていることが原因と思われます。

当初から申請に疑義が生じないよう、日本での活動を正しく行うことが結果的に永住権への近道となるでしょう。

Case4:会社の経営状況の安定性が認められず不許可

在留資格「定住者」からの永住許可申請の不許可事例です。

申請人の略歴
  • 2008年:日本語学校卒業
  • 2008年:日本の大学に入学
  • 2010年:日本人との間に子が生まれる(未婚、認知あり)
  • 2012年:会社設立代表取締役に就任
  • 2012年:大学を卒業
  • 2013年:第2子を出生
  • 2016年:日本人と婚姻
  • 2017年:永住申請
  • 2018年:永住不許可

不許可理由として指摘されたのは以下の通りです。

  • 経営状況が不安定(決算書上の繰越利益が▲300万円)のため

今回の申請人は定住者としての申請であり、日本人である配偶者の年収は800万円ほどでした。違反や未納もなく、
申請人の会社も社保の要件を満たしていましたが、会社を経営している以上決算書での安定性は重視されます。

経営・管理ビザをはじめ、その他の会社経営可能な在留資格でも、事業の状況が慎重に審査されます。就労者に比べて安定性が低いため、その他の就労系からの永住審査より厳しい判断がされると考えた方がよいでしょう。

また、実態の生活水準よりも、決算書上の安定性が求められる点に注意が必要です。過度な節税は不許可の原因となりますし、役員報酬が少なすぎるのも問題視されます。また、今回のケースでは預貯金が3,000万円程ありましたが永住申請では預貯金が重視されず、年収とその安定性が重要だということも念頭に置いて永住申請に臨みましょう。

Case5:年金の未納により不許可

在留資格「日本人の配偶者等」からの永住許可申請の不許可事例です。

申請人の略歴
  • 2011年:日本人と結婚し「日本人の配偶者等」の在留資格取得
  • 2012年:来日以後、在留資格の更新により在留期間5年を取得
  • 2019年:永住申請
  • 2019年:永住不許可

不許可理由として指摘されたのは以下の通りです。

  • 申請人本人の年金が未納であること

国益要件のひとつとして「公的義務を適正に履行していること」が求められます。外国人だから年金の支払い義務はないと誤って認識している方が稀にいますが、外国人であっても、学生などで免除が認められている場合を除いては遅れなく支払う必要があります。今回は、日本人配偶者が不動産業を営む経営者であったため、社会保険ではなく、年金を夫婦でそれぞれ納める必要がありました。今回のケースでは再申請について正常な納付状況が今後2年続いたら永住再申請を受理すると言われたようですが、再申請も同じ理由で不許可となる可能性はあります。税金等の公的義務の履行要件は来日から永住申請時に至るまで、すべてが審査範囲となるからです。

現時点で遡って支払える分はすべて支払い、今後も納期限に遅れなく納付して万全の体制で申請できるよう心がけましょう。

Case6:扶養者数に応じた年収要件を満たせず不許可

在留資格「技能」と「家族滞在」からの永住許可申請の不許可事例です。

申請人の略歴
  • 2007年:技能ビザを取得し、来日
  • 2015年:扶養人数5人(家族滞在の実子+在外被扶養者4名)
  • 2016年:本国の配偶者と離婚
  • 2016年:扶養人数5人⇒1人に変更(家族滞在の実子のみ)
  • 2018年:家族滞在の子とともに永住申請
  • 2018年:永住不許可

不許可理由として指摘されたのは以下の通りです。

  • 扶養人数に対して収入が少ないこと

2015年時点で被扶養者5人に対して収入は300万円前後だったことが不許可原因となっています。その後、本国の配偶者と離婚したことにより、扶養を外す手続きを行い、2016年時点では、日本で一緒に在留する実子1人が被扶養者となりました。しかし、課税・納税証明書で証明する年収・納税・扶養能力については2019年7月を境に3年⇒5年分が必要となっており、より長期間の扶養能力や安定性などが求められます。また、その最低限の審査期間とされる直近5年の間に扶養者数に変動があると、永住申請のために一時的に調整しているのではないか?税金対策で扶養者数を増やしていただけであり、扶養の実態はなかったのではないか?と疑義が生じ、審査にネガティブな影響を与えてしまいかねないため、予め理由書や説明書等で合理的理由を説明をしておいた方がよいでしょう。

扶養者数に応じた永住許可の最低年収額の目安は以下の通りです。

扶養人数0人の場合

収入面の要件(目安):年収300万円

扶養家族1人の場合

収入面の要件(目安):年収380万円(300万円+80万円×1人)

扶養家族2人の場合

収入面の要件(目安):年収460万円(300万円+80万円×2人)

扶養家族3人の場合

収入面の要件(目安):年収540万円(300万円+80万円×3人)

扶養家族4人の場合

収入面の要件(目安):年収620万円(300万円+80万円×4人)

扶養家族5人の場合

収入面の要件(目安):年収700万円(300万円+80万円×5人)

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