扶養人数が多いと永住申請に影響?必要な年収とは?
扶養人数が多いと永住申請に影響?必要な年収とは?
独立生計要件とは?
永住許可の要件のひとつに「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」というのがあります。
具体的には、
- 生活保護などを受けていないこと
- 安定した収入があり、自立した生活が見込まれること
が挙げられます。
「安定した収入」とは、原則過去5年~現在の年収が継続して300万円以上あることが許可・不許可を分けるひとつのラインだと言われています。また「自立した生活が見込まれること」とある通り、永住の審査においては現在の貯金額よりも収入面が重要視されています。
この300万円というのは扶養している家族がいない場合の最低ラインの目安であり、扶養家族がいる場合は1人あたり約80万円~100万円ほど、この「年収300万円」のラインに上乗せして考える必要がありますので注意しましょう。
例えば、配偶者を扶養している場合には申請者の年収が300万円では足りず、最低でも300万円に扶養1人分として80~100万円を年収要件に加えた380~400万円程の年収があれば独立生計要件はクリアしていると考えることができます。さらに子供が1人いて扶養している場合には、配偶者+子供で最低でも160~200万円プラスし、360~500万円の年収が望ましいといえます。
以前は60~80万円程プラスすれば良いと言われていましたが、扶養家族1人で360万円くらいだと不許可になる事例が聞かれるようになりました。この上乗せ金額の変化からも、要件が年々厳しくなっているのがお分かりいただけると思います。
ここでは、扶養人数が1人追加されるごとに必要な追加年収を+80万円と考えて、
以下の表で永住許可に足りる年収をシミュレーションしてみたいと思います。
- 扶養人数0人の場合
-
収入面の要件(目安):年収300万円
- 扶養家族1人の場合
-
収入面の要件(目安):年収380万円(300万円+80万円×1人)
- 扶養家族2人の場合
-
収入面の要件(目安):年収460万円(300万円+80万円×2人)
- 扶養家族3人の場合
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収入面の要件(目安):年収540万円(300万円+80万円×3人)
- 扶養家族4人の場合
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収入面の要件(目安):年収620万円(300万円+80万円×4人)
- 扶養家族5人の場合
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収入面の要件(目安):年収700万円(300万円+80万円×5人)
- 扶養家族6人の場合
-
収入面の要件(目安):年収780万円(300万円+80万円×6人)
- 扶養家族7人の場合
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収入面の要件(目安):年収860万円(300万円+80万円×7人)
- 扶養家族8人の場合
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収入面の要件(目安):年収940万円(300万円+80万円×8人)
- 扶養家族9人の場合
-
収入面の要件(目安):年収1020万円(300万円+80万円×9人)
- 扶養家族10人の場合
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収入面の要件(目安):年収1100万円(300万円+80万円×10人)
※配偶者が扶養者の場合などは、扶養する側の年収で判断しましょう。
扶養人数が多いと永住申請に不利?
結論から言うと、扶養人数が多すぎると永住申請は「独立生計要件」と「国益要件面」の2つの側面から不利になります。
「独立生計要件」として審査される年収額ですが、扶養人数が多すぎる場合には、それだけ、収入として得た金額が扶養家族に分配されていることになるので、扶養人数が少ない場合よりも1人あたりに使えるお金が減るということになります。前の章でお話したように、扶養人数ごとの年収には目安がありますが、扶養人数が不必要に多すぎることは独立生計要件で疑義が生まれる原因となり得ます。
「国益要件」としても、扶養人数が多すぎる場合には不利に働きます。母国在住の親・兄弟まで扶養に入れている場合には、「適切でない人まで扶養に入れて税金対策しているのではないか」と入管審査官に疑われる可能性が高くなります。適切でない過度な税金対策は、地方自治体の財政を圧迫することになりますので、国益要件(公的義務を適正に履行)を満たしていないと判断され、永住審査が不利になる可能性があります。
このように、適正な扶養、扶養人数というのは、永住の2つの要件にまたがって影響を及ぼすため、とても重要です。
永住申請前に扶養について考えなければいけないことは、「本当に必要な扶養なのか?」ということです。また、「どのように扶養しているのか?」ということも客観的に証明できるものである必要があります。
本来扶養に入れるべきではない人を扶養に入れている場合は、まず対象の人を扶養から外し、遡って修正申告をし、正しい税金を納め直す必要があります。本当に必要な扶養であれば、定期的な送金を行い、客観的な証明方法のひとつとして、送金記録を残しておきましょう。扶養人数は永住申請の際にとても重要なポイントとなるため、永住申請前に見直しを行うことをおすすめします。
過度な税金対策の代償
源泉徴収票や課税納税証明書で確認すると、外国在住の父母や祖父母、別居している兄弟姉妹などを扶養に入れて、住民税を非課税としているケースがあります。税金対策として扶養の数を増やすというのは適切ではなく、永住申請においては大きなマイナスとなります。
国益要件でもある「公的義務の履行」については地方自治体と法務局の間で何度も意見交換がされており、住民税などの支払いが適正にされてない外国人に永住権を認めるべきではないという意見がでています。本当に扶養すべき人を扶養している場合は問題ないですが、実際は国際送金の記録がないということも多々あります。
2016年の制度改正によって、親族関係書類と送金記録等がない場合には扶養控除ができないという仕組みに代わりましたが、以前は証明資料がなくても名前を書くだけで簡単に扶養に入れることができたため、それ以前の扶養関係においては在外親族との関係や扶養状況を証明する書類の提出などを求められることが多くなっています。
送金の目安としては、在外(または別居)の扶養家族1人につき、年間38万円以上の送金を行っている必要があります。証明の方法としては、「送金記録」を「親族関係を示す書類」と併せて提出しましょう。