外国人が日本の永住権を取得するのに必要な条件とは?
外国人が日本の永住権を取得するのに必要な条件とは?
永住許可の法律上の要件
外国人が日本の永住権を取得するためには、どのような条件が必要なのでしょうか。
はじめに、法律上の基本的な要件を見てみましょう。
永住ビザを申請する外国人は、「素行が善良であること」が求められます。
具体的には、
- 法律を守って生活していること
- 生活する上で迷惑行為などを繰り返し行っていないこと
が求められます。
しかし、過去に犯罪行為があったからといって、すぐに永住を諦めなければいけないわけではなく、
犯罪行為の内容が重要であり、その結果次第でも取り扱いは大きく異なります。
犯罪行為の内容は、暴行、傷害、窃盗、詐欺、薬物系犯罪など、どれにあたるか、また、スピード超過や人身事故、一時停止違反などの交通違反だったのか
犯罪行為の結果、前科がついたのか、前歴のみだったのか、起訴されたのか、起訴猶予となったのか
反則金となったのか、罰金刑だったのか、実刑だったのか、執行猶予となったのか
などなど、永住申請をする際には、慎重に確認する必要があります。
また、刑を受けた場合でも、その後一定期間を経過すれば、素行善良要件をクリアできる可能性もあります。
これも内容や結果によりますが、軽微な犯罪や罰金刑であれば、刑の執行を終えてからその後5年(執行猶予を宣告された方は執行猶予期間を終えてから5年)を素行善良に過ごすことで、再び永住許可のチャンスが生まれると考えてよいでしょう。
素行善良要件には、「日常生活や社会生活において、風紀を乱すような行為を繰り返し行っていないこと」も含まれています。信号無視や駐停車違反など交通違反での反則金や街宣活動で注意を何度も受けている場合など、繰り返し行うと永住不許可につながる要因となりますので、普段の生活にも注意しましょう。
2つ目の要件として、「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」というのがあります。
具体的には、
- 生活保護などを受けていないこと
- 安定した収入があり、自立した生活が見込まれること
が挙げられます。
生活保護を受けている方は「日常生活において公共の負担になっている」と判断されますので、永住申請するのであれば、生活保護の受給をストップする必要があります。
「安定した収入」とは、原則過去5年~現在の年収が継続して300万円以上あることが許可・不許可を分けるひとつのラインだと言われています。また「自立した生活が見込まれること」とある通り、永住の審査においては現在の貯金額よりも収入面が重要視されています。
この300万円というのは扶養している家族がいない場合の最低ラインの目安であり、扶養家族がいる場合は1人あたり約80万円~100万円ほど、この「年収300万円」のラインに上乗せして考える必要がありますので注意しましょう。
以前は60~80万円程プラスすれば良いと言われていましたが、扶養家族1人で360万円くらいだと不許可になる事例が聞かれるようになりました。この上乗せ金額の変化からも、要件が年々厳しくなっているのがお分かりいただけると思います。
- 扶養家族1人の場合
-
収入面の要件(目安):年収380~400万円
- 扶養家族2人の場合
-
収入面の要件(目安):年収460~500万円
- 扶養家族3人の場合
-
収入面の要件(目安):年収540~600万円
※配偶者が扶養者の場合などは、扶養する側の年収で判断しましょう。
経営・管理ビザをお持ちの会社経営者については、収入(所得)面も重要ですが、サラリーマンよりも安定性や継続性がより重要になってきます。赤字が2期以上続いている、もしくは債務超過状態の会社は永住申請しても許可になる可能性が低いため、永住申請については時期を待ち、経営の安定化を優先させましょう。
事業が問題ないと思われる場合には、過去から現在までの決算書や安定性を示す継続的取引の記録や契約書、説明書なども加えて、会社の安定性を書類で証明できるよう提出書類を整えておきましょう。
3つ目の要件として「その者の永住が日本国の利益に適合すると認められること」とされており、国益要件と呼ばれています。国益については具体的に次の6つを満たしていることが必要です。
- 原則、引き続き10年以上日本に住んでいる
- 上記10年以上の期間のうち、就労資格か居住資格で引き続き5年以上在留している
- 罰金刑や懲役刑などを受けていない
- 住民税、国税などの納税年金、健康保険料の納付、入管法上の届出義務など、公的義務を適正に行っている
- 現在持っている在留資格の在留期間が3年以上
- 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがない
国益要件については、次の章で詳しく見ていきましょう。
国益要件について詳しくみてみよう!
国益要件①(原則、引き続き10年以上日本に住んでいること)
国益要件の1つ目として、「原則として、引き続き10年以上本邦に在留していること」が求められます。
これは、永住許可要件のなかの、「居住要件」と呼ばれるものです。
「引き続き」とあるように、10年の間継続して在留していると認められることが必要です。
たとえば、海外旅行などで数日程度日本を離れるのは問題ありませんが、
次の場合などは居住歴がリセットされてしまう可能性があります。
- 再入国許可の期限を過ぎて海外に滞在してしまった場合
- 更新申請で不許可となり、出国準備(30日)となってしまった場合
- いままでに1回の出国で90日以上日本を離れた場合
- 年間出国日数が合計で100日以上になる場合
ただし、永住申請は帰化申請より厳格ではなく、リセットでもまた再び10年間を過ごさないと許可がでないというわけではありません。例えば、100日以上の出国が10年間のうち1年のみであれば、11年目の出国を少なく日本で過ごすことで、次の年に永住許可が認められる可能性は大いにあります。また、コロナなどの事情で日本に帰って来られなかった場合など、一概にその期間がリセットされるとは言えませんので、申請の際には、審査官への説明を理由書等で明確に伝えるようにしましょう。
また、この居住要件には、「原則」とあるように、特例的に居住歴が10年に満たなくても、永住申請が許可されることがあります。
国益要件②(10年以上の期間のうち、就労資格か居住資格で引き続き5年以上在留していること)
前項で、原則10年間の居住要件があることをお話しましたが、
この期間のうち、就労系の在留資格(ビザ)または居住資格(身分系の在留資格(ビザ))で引き続き5年以上在留している必要があります。
この就労系の在留資格(ビザ)というのは、在留資格一覧表の「一の表」と「二の表」に書かれている在留資格のことを言います。
具体的には、技術・人文知識・国際業務や経営管理のビザで活動している期間を計算します。
注意点として、留学ビザや家族滞在ビザを持っている時に資格外活動許可をとって行っていたアルバイトやパートの期間は就労期間に含めることはできません。また、「技能実習」と「特定技能1号」で働いた期間はこの「就労5年」の期間に含めることは認められていませんので注意が必要です。
ただ、非就労ビザでの資格外活動許可を取って働いていた期間も、技能実習や特定技能として働いていた期間も、
居住要件の「引き続き10年以上日本に住んでいること」という部分には含めることができますので、
ご自身が初めて来日してからどのようなビザを辿って本日まで至ったか、整理しておきましょう。
国益要件③(罰金刑や懲役刑などを受けていないこと)
素行善良要件とも関係する部分ですが、罰金や懲役刑を受けていると永住申請はかなり不利に働きます。スピード違反、飲酒運転、無免許運転など罰金刑以上となり得る交通違反も含まれますので、十分に気を付けましょう。
国益要件④(公的義務を適正に履行していること)
「公的義務」とは次の項目のことを指します。
- 住民税・国税等の納税義務
- 公的年金・公的医療保険の保険料の納付義務
- 入管法上の届出義務
上記税金等に関しては、すべて、期限内に、支払っている必要があります。
サラリーマンなど社会保険に加入し、給料から税金等がすべて天引きされている方は問題ないですが、
コンビニ払いをしている方や転職・求職などで国民健康保険に切り替えたことがある方は
支払漏れが不許可につながりますので、注意しましょう。
また、同世帯の家族が滞納している場合も、永住申請は不許可となります。
提出書類として住民税の納税等を証明する期間は原則直近5年間、年金などの納付に関しては原則直近2年分ですが、それ以前に滞納がある場合でも不許可リスクは残ると考えた方がよいでしょう。
現時点で滞納がある方で永住申請を検討している方は、
遡って払える分は全て払い、年金を納期通り支払い始めてから最低2年間は公的義務を適正に履行した上で永住申請を行いましょう。
入管法上の届出義務は、例えば、以下のようなものです。
- 住居変更の届出(引越しをした場合など各市区町村への手続き)
- 所属機関等に関する届出(転職や事業所変更など、活動場所や契約機関に関する情報が変更になった場合)
- 配偶者と離婚した時の届出
- 配偶者と死別した時の届出
国益要件⑤(現在持っている在留資格の在留期間が3年以上であること)
「現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること」とありますが、当面の間は所持している在留カードの在留期間が3年以上であれば、要件を満たしているとみなされます。
例外として、3年以上の在留期間を持つ外国人から扶養を受けて生活している「家族滞在」の方が扶養者と同時に永住許可申請をする場合、「家族滞在」側の在留期間は1年でもこの要件を満たすものとされています。
国益要件⑥(公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと)
最後の国益要件です。具体的には、感染症予防法で定める一類感染症(エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱など)、二類感染症(ポリオ、結核など)、指定感染症、新感染症にかかっている患者の方や、麻薬、大麻、あへん、覚醒剤などの薬物中毒者でないことなどが求められています。