高度人材にはない永住者のメリットとは?
高度人材にはない永住者のメリットとは?
高度人材とは?
2012年5月7日より高度外国人材の受入れを促進する目的で高度人材ポイント制が導入されています。
高度外国人材は「日本で積極的に受け入れるべき高度外国人材」として次のように位置づけられています。
- 国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することができない良質な人材
- 我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材
こういった優秀な人材には日本で働いてもらいたいので、一定以上のポイントがある外国人を高度人材として認め、比較的長い在留期間と日本での幅広い活動を認め、その他にもさまざまな優遇措置を用意しています。
それまでは「特定活動(高度人材)」という在留資格(ビザ)で高度人材であることを認められていましたが、2015年からは「高度専門職」というビザが新たに創設され、ポイント計算の結果一定点数以上に達した高度外国人材には「高度専門職」ビザをもって活動することができるようになりました。
高度専門職1号と呼ばれる在留資格は、次の3つに分類されています。
さらに、高度専門職1号で3年以上活動を行っていた方で永住と同様の素行善良要件や国益適合要件などを満たしている方を対象に「高度専門職2号」という在留資格が取得できます。
高度専門職2号では高度専門職1号の活動と併せて、ほぼ全ての就労資格の活動を行うことができます。
高度専門職2号のメリット
高度専門職2号では以下のような強力なメリットがあります。1号のメリットと重複する部分もありますが、就労範囲や在留期間においては、2号の方がメリットが大きいと言えます。
原則、外国人が日本で許られる活動は、許可された在留資格に応じた活動のみです。しかし、高度専門職を持って在留する場合は、複数の在留資格をまたぐ活動を行うことができます。例えば、研究施設での研究や研究指導を行いながら関連した事業の経営を行うこともできます。このように複数の在留資格にまたがる活動ができるのは、高度専門職のメリットと言えます。
高度専門職1号で従事することができるのは、研究や教育分野での活動、自然科学や人文科学分野での活動、経営・管理分野での活動に限られていますが、高度専門職2号では1号で認められている活動類型と合わせて、さらにその他の就労活動を行うことも認められています。教育活動に加えて芸能活動を行ったり、芸術分野で働きながら会社経営をすることも可能です。ただし、日本の産業や国民生活に良くない影響を与えると判断される種別の活動では2号の許可は得られません。また、永住ビザとは異なり、公私の機関と契約を結んで就業していることが前提のビザなので、高度専門職のビザを持ちながら働かないで在留し続けることなども認められていません。
在留期間が「無期限」となるため、日本にずっと住むことができるようになります。永住者と高度専門職2号以外の在留資格では、在留期間が最長でも5年と制限されているため、在留期限前に在留期間更新許可申請をして許可をもらう必要があります。日本を活動の拠点としている外国人にとって、在留期限のたびに書類収集や作成など、申請の準備をしなければならず、ストレスに感じることも多いと思います。この点高度専門職2号や永住権を取ることで、在留期間の更新申請のストレスや不安から解放されることになるので、外国人の方にとって大きなメリットと言えます。
通常、永住申請を行うには居住要件として、10年以上日本に住んでいる必要がありますが、高度人材の場合にはこの居住要件が緩和されます。高度人材のポイント計算をして、3年前から引き続き70点以上の方は3年以上、1年前から引き続き80点以上の方は1年以上日本に在留していることで、永住許可の重要な要件である居住要件を満たします。
高度専門職の配偶者の場合は特定活動(33号:高度専門職外国人の就労する配偶者)の在留資格を取得すれば、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、興行の一部に該当する活動を行うことができます。同居している必要はありますが、在留資格「家族滞在」のように扶養に入る必要はないですし、週28時間の就労制限もありません。学歴・職歴を満たさない場合でも活動を行うことができますが、報酬額は日本人と同等額以上と認められないと許可されません。
高度専門職は、一定の条件下で親の帯同が認められています。親を帯同させるには特定活動(34号:高度専門職外国人又はその配偶者の親)の在留資格を取得する必要があり、まず、日本で帯同する親の入国目的は以下のいずれかに当てはまっている必要があります。
- 高度専門職の外国人(またはその配偶者)の子を7歳になるまでの間養育する目的であること
- 高度専門職の外国人(またはその配偶者)が妊娠中である場合に、介助や家事などの支援を行う目的であること
1の場合の「子」は連れ子でも養子でもOKです。注意点としては、高度専門職の外国人(またはその配偶者)のどちらか片方の親に限られるということです。この点は厳しすぎると批判の声も多い部分です。
また、「高度専門職」として在留する外国人について、次の要件をいずれもクリアする必要があります。
- 申請時点の世帯年収が800万円以上
- 帯同する親と同居すること
世帯年収とは、高度専門職で働く外国人とその配偶者の年収の合算と明記されています。
厳しい要件ですが、日本に親を呼び寄せて滞在させられるビザは一部例外を除いて基本的にはないので、親の帯同が認められているというだけでも優遇制度と言えます。
一定の要件の下で家事使用人の帯同が認められます。大きく、次の3つに分かれます。
- 入国帯同型
- 家庭事情型
- 金融人材型
家事使用人は在留資格「特定活動」をもって日本に在留することになります。「経営・管理」や「法律・会計業務」など一部の在留資格のみ家事使用人の雇用が認められています。高度専門職で家事雇用人を帯同できる要件は以下の通りです。
入国帯同型とは、外国で雇用していた家事使用人と同時期に日本へ入国し、引き続き日本でも家事使用人として雇用する場合を指します。
- 申請時点の世帯年収が1,000万円以上
- 帯同できる家事使用人は最大1名まで
- 家事使用人に払う報酬は月額20万円以上
- (同時入国の場合)入国前に1年以上その高度外国人材に雇用されている
- (先に高度外国人材が入国する場合)高度外国人材が入国する前1年以上その高度外国人材に雇用されている+高度外国人材が日本に入国した後も高度外国人材(又は同居親族)に雇用されている
- 高度外国人材が日本から出国する時には、家事使用人も一緒に日本を出国予定である
家庭事情型とは、申請時点で「13歳未満の子」や「病気等で日常の家事ができない配偶者」がいる高度外国人材が家事使用人を雇う場合を指します。
- 申請時点の世帯年収が1,000万円以上
- 帯同できる家事使用人は最大1名まで
- 家事使用人に払う報酬は月額20万円以上
金融人材型とは、 投資運用業等に従事する金融人材が家事使用人を雇用する場合を指します。
- 申請時点の世帯年収が1,000万円以上
- 帯同できる家事使用人は最大2名まで※
- 家事使用人に払う報酬は月額20万円以上
※2名の場合は世帯年収が3,000万円以上である必要があります。
高度外国人材のメリットとして、入国・在留審査で優先的に早期処理が行われることが挙げられます。出入国在留管理局のホームページには、目途となる審査日数も明記されています。許可を得るまでに時間がかかるとなかなか計画が立てられませんので、優先処理は大きなメリットです。
目途となる審査日数は以下のとおりです。
- 入国事前審査:申請受理から10日以内
- 在留審査:申請受理から5日以内
永住ビザを取得するメリット
永住や帰化は、日本に住み続けたい外国人にとって、最終目標とされることが多いです。在留期間に関する制限がなくなるという点で高度専門職2号と似ているため、永住と高度専門職2号はよく比較されます。
ここまで高度専門職2号のメリットを見てきたので、永住ビザを取得するメリットも見てみましょう。
高度専門職2号と同じく、永住ビザを取得すると、在留期間が「無期限」となり、日本にずっと安定して住むことができるようになります。ちなみに、永住権や高度専門職2号を取得して在留期間に制限がなくなったあとも、有効な在留カードを所持する必要があるため、7年毎に更新し続ける必要があります。ただし、この更新は通常の更新申請とは異なり、あくまでも形式的なものです。また、在留カードの有効期間を経過してしまっても、永住権そのものが消滅してしまうわけではなく、新しい在留カードを発行してもらうことができます。
永住ビザを取得すると、その他の在留資格で定められているような活動の制限がなくなり、公的機関(政府や警察署)への就労以外であれば、学歴に関連性のない職種の仕事に就いたり、自由に転職したり、会社経営をしたり、アルバイトをしたりと自由に活動できるようになります。
通常、就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務など)をお持ちの方の就業先は、大学や専門学校で専攻した内容と従事する職務内容との間に相当程度の関連性が必要となります。また、退職の際には、3ヶ月以内に現在の在留資格に適合した転職先に就業するか、他の要件を満たせる活動を開始して在留資格の変更申請を行う必要があり、それを怠ると在留資格の取消対象となってしまいます。
また「経営・管理」ビザで起業する場合には「資本金または出資の総額が500万円以上」もしくは「2人以上の常勤(日本人や永住者)の職員」が法律上の要件のひとつとなっていますが、永住者の場合には日本人と同様に1人でも、資本金が少額でも起業できることになり、企業がしやすくなります。
就労制限がない在留資格は、他にも配偶者ビザや定住者ビザなどがありますが、配偶者ビザをお持ちの場合には、その配偶者が離婚・死別して日本で居住できる根拠を失った際には、在留資格の該当性がなくなってしまい、速やかに対応しないと、日本に居られなくなってしまいます。一方、永住を取得すれば離婚しても永住が取り消されることもありません。このように、永住資格を取得すると、日本における活動の自由度が格段に高くなりますので、今後のライフプランの選択肢も大幅に広がることになります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。また、大手銀行などは、銀行で口座をつくったりも自由に行えないこともあります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。
在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。その点、永住者は社会的信用が高いので、日本人と同じようにローンを組んだり、融資を受けたりすることも認められやすくなります。
永住ビザは取得しても国籍が変わるわけではないので、パスポートもいままでどおりのものを持ち続けることになり、母国への帰国は問題なく行うことができます。
永住の場合、あくまで国籍は変わらないため、万が一退去強制事由に該当してしまった時は母国へ強制的に帰ることになり、また、その後最低でも何年間かは来日できなくなってしまいます。しかし、永住権を取得していると法務大臣の裁量により在留特別許可が得て引き続き日本で暮らせる可能性が他のビザよりも高くなります。このことは、出入国管理及び難民認定法50条1項1号の「法務大臣の裁決の特例」として明記されています。
法務大臣は(中略)当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
1.永住許可を受けているとき。
出入国管理及び難民認定法50条(法務大臣の裁決の特例)1項1号
2.かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
3.人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
4.その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
永住ビザと高度専門職、結局どっちがいいの?
両者のメリットを比較してみましょう。
永住 | 高度専門職2号 | |
---|---|---|
活動範囲 | 制限なし | 活動範囲はかなり広い |
在留期間 | 制限なし | 制限なし |
配偶者の就労 | 活動制限なし(永配) | 制限はあるが活動可(特定活動) |
親の帯同 | 不可 | 一定の条件下で帯同可 |
家事使用人の帯同 | 不可 | 一定の条件下で帯同可 |
高度専門職2号でできる活動範囲は他の在留資格に比べてとても広く、一般的な就業であれば高度専門職で困ることはないと思います。ただ、永住者は活動制限がなく、たとえ永住権取得後に無職になっても、問題なく永住権を持ち続けることができます。高度専門職は就業している前提の在留資格なので、就業に縛られる点では、永住者ほど自由度は高くありません。その意味で、やはり将来にわたって日本に長く住み続けたい方は高度専門職1号取得から3年たった時点で高度専門職2号に切り替える方よりも、永住者を目指す方が多いと思います。
配偶者の就労の面では、永住者の夫・妻であれば「永住者の配偶者等」ビザを取得して就労をおこなうことができます。配偶者ビザでの就労には、業種・職種や勤務時間の制限がありません。一方で高度専門職2号の配偶者が日本で働く場合には、「特定活動」か「家族滞在」ビザでの就労が考えられますが、特定活動のビザを取得して就業する場合には業種の制限があり、報酬額は日本人と同等額以上と認められないと許可されません。家族滞在の場合は扶養に入って週28時間までという就労時間の制限を守って就労しなければなりません。
また、高度専門職2号の子に関しては「家族滞在」ビザのみのため、就労は資格外活動許可を得て週28時間という制限があるなかで行う必要がありますが、永住者の「子」は「永住者の配偶者等」ビザを取得すれば就労制限はなく、また、永住者の子として日本で生まれた日から30日以内に申請をすれば子も永住ビザを比較的簡単に取得することが出来ます。配偶者や子が自由に働きに出たいのであれば、永住の方がメリットが大きいかもしれません。
親の帯同は高度専門職のみに例外的に認められています。条件は厳しいですが、永住者であっても親の呼び寄せは原則できないので、親の呼び寄せができるのは高度専門職ならではの大きなメリットと言えます。また、家事使用人の帯同も条件は厳しいですが高度専門職には認められており、永住者には認められていないため、親や家事使用人の帯同が必要な場合には、高度専門職一択になります。