永住者と特別永住者の違いとは?

永住者と特別永住者の違いとは?

今日のおはなし

特別永住者とは?

特別永住者とは、通常の入管法ではなく、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に定められた「特別な永住者」として日本に在留している方のことを指します。

この在留資格の設立は、第二次世界大戦まで遡ります。当時の朝鮮半島や台湾に住む人たちの一部は、日本の植民地となったことをきっかけに日本に渡り、日本で生活をすることを余儀なくされました。

日本の敗戦後、1952年のサンフランシスコ平和条約にて朝鮮半島や台湾の返還が決まり、同時に、日本に住むことになった朝鮮人・韓国人・台湾人は日本国籍を離脱することになりました。

しかし、戸籍上の国籍が戻っても、日本にすでに生活の基盤がある方々や、日本での生活しか知らない子・孫がいる場合など、さまざまな理由から帰国できない(帰国しない)方も少なくありませんでした。

日本に定住はしているけれど「日本人」とすることはできないこと、また、そのきっかけが戦争であることなど、考慮すべきことが多多く、日本国としての取り扱いはなかなか決まらないまま、このような方たちの身分は長い間不安定な状態に置かれていました。

1991年11月1日に施行された入管特例法により、それらの方々に「特別永住者」という新たな在留資格を認めることが決まりました。その後、特別永住者制度については2012年に大きな改正がありましたが、令和3年末時点で約30万人の方が特別永住者として認められています。

2012年の制度改正

特別永住者の取り扱いについては、2012年7月9日に大きな制度改正がありました。

外国人登録証明書の廃止

「外国人登録証明書」が廃止され、新たに「特別永住者証明書」が交付されることになりました。

再入国制度の見直し

再入国許可の有効期間が見直され、最長4年⇒6年となりました。また、「みなし再入国制度」が導入され、特別永住者の場合には出国後2年以内であれば再入国許可を取得しなくても良いことになりました。(通常の中長期在留資格の場合も、再入国許可の最長が4年⇒5年、1年以内の再入国であれば再入国許可の取得は不要となりました)

特別永住者の申請方法

通常の在留資格の申請とは違い、住民票がある市区町村の窓口にて手続きを行います。

特別永住者と通常の在留資格の外国人が結婚した場合、配偶者の「永住者の配偶者等」への変更申請は出入国在留管理局で行います。そのふたりの間に子が生まれた場合、出生後60日以内に居住地の市区町村窓口において「特別永住者許可申請」を行うことで、特別永住者として在留することが認められます。

永住者(一般永住者)と特別永住者の違い

根拠法の違い

永住者は一般的な中長期在留資格と同様、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」に基づいていますが、特別永住者は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に基づいて設置された在留資格です。

審査基準の違い

永住者になるためには、一定の居住や国の負担にならないことを求められる国益適合要件の他、原則として次の要件を満たしている必要があります。

  • 法律順守などを求められる素行善良要件
  • 安定した自活能力が求められる独立生計要件

これらの要件はそれぞれ細かく規定されており、それぞれに対する証明・疎明・説明が書面にて求められ、また審査についても厳格で慎重な審査が行われますが、特別永住者に対してはこれらの要件は求められていないため、自活能力がない場合でも、日本に住み続ける権利が保障されています。

第二十二条(永住許可)

(前略)その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。
 素行が善良であること。
 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。

退去強制の違い

帰化と異なり、永住権を持つものはあくまで外国籍なので、一定の事由に該当する場合には、日本からの退去強制(母国への強制送還)の対象となります。永住者は入管法24条の要件で定められた事由に該当する場合、強制送還の対象となります。

しかし、特別永住の場合には、入管特例法22条退去強制される事由が以下の要件に当てはまる場合のみに限られています。

  • 内乱・外患に関する罪で禁錮以上の刑に処せられた者(執行猶予を受けた場合などを除く)
  • 国交に関する罪で禁錮以上の刑に処せられた者
  • 外国の元首、外交使節、公館に対する犯罪行為で禁錮以上の刑に処せられた者で、その犯罪行為によって日本国の外交上の重大な利益が害されたと認定したもの
  • 無期や7年を超える懲役・禁錮に処せられた者で、その犯罪行為によって日本国の重大な利益が害されたと認定したもの

再入国許可の違い

永住権を持つものはあくまで外国籍のため、日本を出国して再入国する際には、「再入国許可」が必要であり、期限を守らずに日本を離れてしまうと、せっかく苦労して得た永住権を失ってしまう恐れがありますので、注意が必要です。

証明書携行義務の違い

在留カードには常に在留カードを携帯しておく義務があります。

特別永住者には、「特別永住者証明書」という在留カードによく似たカードタイプの証明書が付与されますが、特別永住者には証明書を持ち歩く義務はありません。ただし、提示義務はありますので、もしも求められた場合には保管場所まで同行して提示する必要はあります。

帰化との違い

帰化すると、日本国籍を得ることになります。日本は二重国籍を認めていませんので、元の国籍については離脱しなければいけません。日本の国籍を取得できるので、日本で戸籍を取得したり、参政権が認められたり、日本の旅券(パスポート)を取得できます。また日本人になるので、先ほど述べたような退去強制もありませんし、在留資格を取り消されるような心配もありません。

一方、特別永住者はあくまで外国籍であり、一般永住者同様、活動制限や在留期限に制限はありませんが、上記のようなメリットを受けることはできません。

特別永住者証明書について

特別永住者証明書は、2012年の制度改正により導入された特別永住者専用のカードです。
通常の在留カードとつくりはよく似ていますが、記載事項などが異なります。

記載事項は以下の通りです。

  • 特別永住者証明書番号
  • 氏名
  • 生年月日
  • 性別
  • 顔写真(16歳以上)
  • 国籍・地域
  • 住居地
  • 証明書の有効期間

特別永住者証明書の有効期間は16歳を境目に異なります。

  • 16歳未満の場合:16歳の誕生日まで
  • 16歳以上の場合:申請・届出後7回目の誕生日まで

一般永住者同様、特別永住者は在留期間が無制限であり「在留期限」はないのですが、特別永住者証明書には有効期間があるため、証明書の更新手続は必要となります。

特別永住者の場合は、手続きはやはり入管ではなく居住地の市区町村の役所窓口で行います。
本人の他、親族や法定代理人、依頼を受けた行政書士も手続きが可能です。

下リンクから、特別永住者証明書有効期間更新申請書をダウンロードして、必要事項記入の上、写真1葉とともに提出します。有効なパスポートと更新する特別永住者証明書の提示が必要ですので、持参しましょう。なお、更新に手数料はかかりません。

特別永住者証明書有効期間更新申請書

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