永住者と定住者の違いとは?
永住者と定住者の違いとは?
はじめに
定住者と永住者は名前は似ていますが、全く違うものです。ですが、永住者というのは知っていても、「定住者」という在留資格がどういったものなのか分からない、とたまに質問を受けることがありますので、今日はこのふたつの在留資格についてお話しようと思います。
定住者ってどんなビザ?
定住者(定住ビザ)とは、特別な理由がある外国人には日本での居住を認めてあげようという趣旨から設けられた在留資格です。日系3世・4世の方や、連れ子として来日した方、日本人と離婚・死別して配偶者ビザでは日本に在留できなくなった方などが定住者として認められる例です。
法律上定まっている「定住者」としての定義もあれば、他の在留資格(ビザ)の活動内容に当てはまらない場合の対応として「定住者」ビザが使われることもあります。
子の場合には、未成年で未婚であることなど、それぞれに細かい条件はありますが、「定住者」の在留資格として当てはまるのは具体的に次のような場合です。
- タイ・マレーシア等に一時滞在する難民(1号)
- 元日本人の子(3号)
- 元日本人の孫(4号)
- 元日本人の配偶者(5号イ)
- 定住者の配偶者(5号ロ・5号ハ)
- 帰化前に生まれた子(定住者)の配偶者(5号ロ)
- 海外で生まれた永住者の子(6号イ)
- 日本で生まれたけどすぐに国外転出した永住者の子(6号イ)
- 永住者・特別永住者の連れ子(6号イ)
- 帰化日本人の連れ子(6号イ)
- 帰化前に生まれた子(6号イ)
- 帰化前に生まれた子(定住者)の子(6号ロ)
- 定住者の子(6号ロ、6号ハ)
- 配偶者が日本人・永住者・特別永住者・定住者である配偶者ビザを持つ者の連れ子(6号ニ)
- 日本人の6歳未満の養子(7号イ)
- 永住者の6歳未満の養子(7号ロ)
- 定住者ビザの6歳未満の養子(7号ハ)
- 特別永住者の6歳未満の養子(7号二)
- 中国在留邦人とその配偶者・子など(8号)
続いて、告示外定住として認められるケースが多いものを一部紹介します。
- 離縁された特別養子縁組の養子
- 配偶者ビザで在留している方が離婚した場合
- 配偶者ビザで在留している方が死別した場合
- 配偶者ビザで在留している方が婚姻破綻した場合
- 日本人の実子の監護養育者
- 難民認定不許可の後、特定活動ビザで一定年数が経過した場合
- 告示内定住として在留していた場合
- 永住者の再入国が期限を過ぎてしまった場合
永住ビザってどんなビザ?
永住ビザは日本にずっと住みたいと考える外国人の多くが、最終的なゴールとして取得を目指している在留資格です。永住ビザを取得すると永住者となり、外国籍のまま日本にずっと住むことができるようになります。
外国人の方が永住者となる主なメリットは以下の通りです。
永住ビザを取得すると、在留期間が「無期限」となるため、日本にずっと安定して住むことができるようになります。永住者と高度専門職2号以外の在留資格では、「最長でも5年」と在留期間が定められているため、在留期限前に在留期間更新許可申請をして許可をもらう必要があります。日本を活動の拠点としている外国人にとって、在留期限のたびに書類収集や作成など、申請の準備をしなければならず、ストレスに感じることも多いと思います。この点永住権を取ってしまえば、在留期間の更新申請のストレスや不安から解放されることになるので、外国人の方にとって大きなメリットと言えます。
永住者となった後も、有効な在留カードを所持・更新し続ける必要がありますが、永住者の在留カード更新は通常の更新申請とは異なり、あくまでも形式的なものです。永住の在留カードは7年の有効期間が定められていますが、在留カードの有効期間を経過してしまっても、永住権そのものが消滅してしまうわけではなく、新しい在留カードを発行してもらうことができます。
永住ビザを取得すると、その他の在留資格で定められているような活動の制限がなくなり、公的機関(政府や警察署)への就労以外であれば、学歴に関連性のない職種の仕事に就いたり、自由に転職したり、会社経営をしたり、アルバイトをしたりと自由に活動できるようになります。
通常、就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務など)をお持ちの方の就業先は、大学や専門学校で専攻した内容と従事する職務内容との間に相当程度の関連性が必要となります。また、退職の際には、3ヶ月以内に現在の在留資格に適合した転職先に就業するか、他の要件を満たせる活動を開始して在留資格の変更申請を行う必要があり、それを怠ると在留資格の取消対象となってしまいます。
また「経営・管理」ビザで起業する場合には「資本金または出資の総額が500万円以上」もしくは「2人以上の常勤(日本人や永住者)の職員」が法律上の要件のひとつとなっていますが、永住者の場合には日本人と同様に1人でも、資本金が少額でも起業できることになり、企業がしやすくなります。
就労制限がない在留資格には、永住者の他に、
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
がありますが、配偶者ビザをお持ちの場合にその配偶者が離婚・死別して日本で居住できる根拠を失った際には、在留資格を維持するために再婚するか、他の在留資格に変更するなど対応が必要となり、いずれの在留資格要件も満たせない場合には帰国を余儀なくされてしまいます。
一方、永住を取得すれば離婚しても永住が取り消されることもありません。このように、永住資格を取得すると、日本における活動の自由度が格段に高くなりますので、今後のライフプランの選択肢も大幅に広がることになります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。また、大手銀行などは、銀行で口座をつくったりも自由に行えないこともあります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。
在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。その点、永住者は社会的信用が高いので、日本人と同じようにローンを組んだり、融資を受けたりすることも認められやすくなります。
永住ビザは取得しても国籍が変わるわけではないので、パスポートもいままでどおりのものを持ち続けることになり、母国への帰国は問題なく行うことができます。一方、帰化の場合は国籍が日本になるため、母国へ帰国するのにも手続きが必要になります。
永住の場合、あくまで国籍は変わらないため、万が一退去強制事由に該当してしまった時は母国へ強制的に帰ることになり、また、その後最低でも何年間かは来日できなくなってしまいます。しかし、永住権を取得していると法務大臣の裁量により在留特別許可が得て引き続き日本で暮らせる可能性が他のビザよりも高くなります。このことは、出入国管理及び難民認定法50条1項1号の「法務大臣の裁決の特例」として明記されています。
法務大臣は(中略)当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
1.永住許可を受けているとき。
出入国管理及び難民認定法50条(法務大臣の裁決の特例)1項1号
2.かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
3.人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
4.その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
定住者から永住者になるには
様々な事情や理由があって、現在「定住者」ビザで日本に在留している方がいると思いますが、そのなかには日本と関わりが深く、より安定的な生活を求めて定住者から永住者になりたいという方も少なくないと思います。
定住者から永住権を取得して、日本に長く在留するにはどのようにすればよいのでしょうか?
まず、現在「定住者」ビザで在留中の方が永住ビザを取得するためには、いくつかの要件をクリアしなければなりません。
永住者になるためには、原則として次の要件をすべて満たしている必要があります。
- 法律順守などを求められる素行善良要件
- 安定した自活能力や公共の負担とならないことが求められる独立生計要件
- 一定の居住や国の利益となることが求められる国益適合要件
これらの要件はそれぞれ細かく規定されており、それぞれに対する証明・疎明・説明が書面にて求められ、また審査についても厳格で慎重な審査が行われます。また、定住者ビザで日本に在留している方のなかには、扶養されて暮らしているケースも多いと思います。扶養されている場合には「扶養者」について、素行が善良か、税金を払って国益となっているか、十分な生計があるかなどの各要件を満たしているかどうかを詳しく審査されます。
国益適合要件の中には、申請外国人が日本に一定期間以上住んでいることが要件のひとつとなっており、これを居住要件といいます。永住権を取るためには、原則10年以上日本に居住している必要があり、さらにこの10年のうち5年間は就労系の在留資格(ビザ)をもって働いている必要があります。
ただし、定住者のように日本と強い結びつきがあると認められているような場合には、安定して日本に住める状態をつくってあげるべきだよね、という考え方から、求められる居住要件の期間が短縮されています。
具体的には、定住者の認定許可や変更許可を受けた日から引き続き5年以上日本に在留していれば居住要件を満たすとされています。
原則&特例 | 日本居住要件 |
---|---|
原則 | 10年以上 |
定住者 | 5年以上 |
また、「日本人の配偶者等」の方が離婚して定住者ビザに変更した場合は、配偶者ビザだった期間を合算することができます。例えば、「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していた期間が2年、「定住者」ビザで在留している期間が3年なら合計5年以上となり、特例での居住要件を満たしていることになります。
居住日数のリセットに注意!
定住者は特例として、定住者の在留資格となってから、引き続き5年以上日本に在留していれば永住許可の居住要件を満たすとされています。
「引き続き」とあるように、在留資格が途切れることなく、日本に継続して5年在留している状態を意味しています。1回3か月以上の長期出国や年間計100日以上の細かい出国などがあると「引き続き」と認められなくなる可能性があるので、注意が必要です。
たとえば、海外旅行などで数日程度日本を離れるのは問題ありませんが、長期の海外出張があったり、本国へ出産のために帰省した場合などには、居住歴がリセットされてしまう可能性があります。具体的には以下に該当する場合に、引き続き日本に在留しているとは認められず、居住年数がリセットされてしまう恐れがあります。
- 再入国許可の期限を過ぎて海外に滞在してしまったことがある
- 更新申請で不許可となり、出国準備(30日)となってしまった
- いままでに1回の出国で90日以上日本を離れた
- 年間出国日数が合計で100日以上となった
ただし、永住申請は帰化申請より厳格ではなく、リセットでもまた再び居住要件を1から満たさないといけないというわけではありません。1年での出国が120日程度であれば、出国の合理的な理由を説明することでカバーすることは可能です。その他、日本における所有不動産の有無や子供が日本の学校に通っているなど日本との強い結びつきがあれば、永住申請の際には書き加えておくべきです。日本に生活の基盤があること、日本にただ住みたいという願いも大事ですが、「これからも日本に住む必要がある」という明確な理由があり、その具体的信憑性が認められれば、許可される可能性はあります。
また、コロナウイルス感染症などの事情で日本に帰って来られなかった場合など、一概にその期間がリセットされるとは言えませんので、申請の際には、審査官への説明を理由書等で明確に伝えるようにしましょう。