母国から両親を呼びよせたい!永住者が行う申請とは?
母国から両親を呼びよせたい!永住者が行う申請とは?
永住者は親を呼び寄せられる??
永住者は、日本での在留期間が無制限となり、また活動制限もなくなるため、ほとんど日本人と同じように日本で活動をし、日本に住み続けることができます。ただし、あくまでも永住者の国籍は外国人であり、永住ビザでも認められていないことはあります。
そのなかのひとつに親の呼び寄せがあります。
永住者が母国から配偶者や子を呼び寄せる際には「永住者の配偶者等」という資格で呼び寄せることになります。諸要件はありますが、就労ビザを新たに取得する場合などに比べると、比較的日本に住む理由は受け入れられやすいと思います。
また、永住者ではなく就労ビザで日本に滞在する外国人でも、配偶者や子であれば、「家族滞在」ビザで本国から日本に連れてくることができます。
しかし、現状の日本の在留資格には、母国にいる「親」を呼び寄せるためのビザというのは、基本的には存在しません。
これは、日本での活動を制限されない永住者にとっても例外ではなく、永住者の親の在留というのは基本的に認められていませんし、「永住者の配偶者等」の「等」に親の意味は含まれていません。
一時的なものであれば、「短期滞在」で入国することはできます。たとえば、日本で生活する子の出産の時などは、本国から親を呼び寄せて入国してもらい、産前産後の手助けをしてもらうことも可能です。しかし、短期滞在での滞在日数は最大90日までですので、例外的な延長が認められる場合を除いては、日本で90日以上生活することはできません。
では、親を呼び寄せて、日本に在留させることは絶対に無理なのでしょうか?
条件はかなり厳しいですが、健康上の問題がある高齢の親の世話をする場合など、法務大臣が個々人の特別な事情に鑑みて、人道的に救済の必要があると判断した場合には、「特定活動(告示外)」として、在留資格を認める可能性があります。
入管法上、特定活動の活動内容は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と幅を持たせており、許可基準についても「法務大臣が入国が適当と定めた場合」と抽象的な記述になっています。
いわゆる「その他」的な扱いなので、許可のための条件についても不明確な部分が多いものになりますが、以下のふたつをどちらも満たすと認められた場合には在留資格「特定活動」の許可がおりるケースがあります。
- 呼び寄せられる「親」が日本で生活をする具体的必要性
- 日本で呼び寄せる「子」の十分な扶養能力と母国に戻れない理由
ひとつずつ具体的に見てみましょう。
現在本国にいる「親」がわざわざ日本で暮らさなくてはならなくなった具体的な理由と必要性が妥当であると認められなければ、親を日本に呼び寄せて住まわせることはできません。具体的には呼び寄せる「親」について、以下のような場合に妥当性があると認められる可能性があります。
- 年齢が70歳以上
- 自活能力がない
- 健康上の問題がある
- 母国や第三国に身寄りがない
親の年齢については、非常に重要なポイントとなります。現在は超高齢社会に突入していますので、呼び寄せる親が70歳未満だと母国でひとりでも十分に暮らしていけるだろうという判断になり、呼び寄せが難しくなります。病気や障害などの理由で働けない場合には70歳未満でも呼び寄せは不可能ではないですが、原則は70歳を超える高齢者(後期高齢者)が対象となります。
健康で自活能力があれば日本に呼び寄せる必要はないですし、日本に来るにしても特定活動ではなく、ご本人が就労ビザを取って来日し、就労しながら居住する方法をとることになります。しかし、病気などの健康上の問題があったり、寝たきりで介護が必要なのであれば、あるいは日本に呼び寄せて世話をする必要があるといった理由も考えられます。
ただし、本国に他に親族がいる場合には、わざわざ日本に来る方が負担が大きいのでは?となりますし、日本と母国以外の第三国に他に親族がいる場合などにも、日本でなければいけない合理的な理由が求められます。
現在、就労系在留資格や永住者として日本で暮らしていて、母国から親を日本に呼び寄せたい場合には、日本で呼び寄せる側である「子」についても、次のような条件を満たしているとことが求められています。
- 本国に戻れない(日本に住み続けないといけない)合理的な理由がある
- 子の世帯に十分な扶養能力がある
現在本国で暮らす「親」がわざわざ日本に来る必要があるのか、という部分も説明が必要ですが、「子」についても、親の世話が必要なのであれば、帰国した方がよいのではないか?といった考えが審査官の頭の中にあります。そのため、呼び寄せる側も日本に住み続けなければいけない、という合理的な理由が必要になってきます。
また、「親」には自活能力がない前提で呼び寄せるので、来日後、日本に中長期的に住むことになる親の生活費は日本で呼び寄せた子の世帯が負担することになります。特定活動で日本に居住することになった場合でも、来日した「親」の就労は認められていませんので、高齢の被扶養者が1人増えてもそれを補って生計を維持するに足りる十分な収入や貯蓄がなければ許可はおりません。また、審査官は、来日後に家族の誰かが生活保護を受けるような事態になれば、国の負担が大きくなってしまうという考えのもと判断をします。そのため、年収や貯蓄をはじめとした子の世帯の収入や生活安定性・扶養能力がが非常に重要視され、高めのハードルが設定されています。目安としては、年収が安定して800万円以上ないと他の条件を満たしていても、許可率は下がります。
高度専門職は親を呼び寄せられる??
ここまで、永住者を含む、通常のビザ(在留資格)では親を呼び寄せて長期滞在させることはできないという話をしてきましたが、例外的に、高度専門職のビザをお持ちの高度人材であれば、一定の条件下で親の帯同が認められています。これは、優秀と認められる高度人材にはできる限り日本に居住して、その技能や知識を活用して日本の経済発展に寄与してもらいたいという制度趣旨から生まれた優遇制度であり、高度人材と認められるには一定以上の年収も求められているため、他の在留資格に比べて扶養要件をクリアしやすいことも関係しています。
ただし、それでも親を帯同させるには様々な条件があり、すべての要件を整えて親を帯同している高度人材はそう多くはありません。まず、日本で帯同する親の入国目的は以下のいずれかに当てはまっている必要があります。
- 高度専門職の外国人(またはその配偶者)の子を7歳になるまでの間養育する目的であること
- 高度専門職の外国人(またはその配偶者)が妊娠中である場合に、介助や家事などの支援を行う目的であること
1の場合の「子」は連れ子でも養子でもOKです。注意点としては、高度専門職の外国人(またはその配偶者)のどちらか片方の親に限られるということです。この点は厳しすぎると批判の声も多い部分です。
また、「高度専門職」として在留する外国人について、次の要件をいずれもクリアする必要があります。
- 申請時点の世帯年収が800万円以上
- 帯同する親と同居すること
世帯年収とは、高度専門職で働く外国人とその配偶者の年収の合算と明記されています。
厳しい要件ですが、日本に親を呼び寄せて滞在させられるビザは基本的には他にないので、親の帯同が認められているというだけでも優遇制度と言えます。ちなみに、高度人材の親は特定活動(34号:高度専門職外国人又はその配偶者の親)の在留資格を取得して在留することになります。
現在永住ビザをお持ちの方で、上記の理由で親を呼ぶ必要があるけれども、どうしても老親扶養などの特定活動ビザの要件には合わないという場合、永住者から高度専門職1号への変更をすることは一応認められています。さらにその後、高度専門職1号で3年を経過すれば、高度専門職2号への切り替えも可能です。
また、高度専門職から永住者になる際には、居住要件についての特例制度が利用できますので、高度専門職1号から永住者となった方は少なくないですが、現在永住者で、過去に「高度専門職1号」の在留資格で3年以上在留していた方は、高度専門職2号への直接の移行が認められる場合もあります。
原則・特例 | 住民税の課税・納税証明 | 年金・健康保険納付証明 |
---|---|---|
原則 | 直近5年分 | 直近2年分 |
高度人材ポイント70点以上の場合 | 直近3年分 | 直近2年分 |
高度人材ポイント80点以上の場合 | 直近1年分 | 直近1年分 |
高度専門職2号は、永住権と同じく在留期限が無期限ですが、契約機関(活動機関)と紐づいている在留資格になるため、無職になることはできませんので、注意が必要です。
老親扶養のための手続きの流れ
老親扶養で親を日本に呼び寄せたい場合には、どのような手続きが必要になるのでしょうか?
冒頭でもお話したとおり「特定活動」ビザは、一般的な在留資格の申請手続きの類型に当てはまるものではなく、あくまで例外的な「その他」の取り扱いとなるため、海外から呼び寄せる場合でも「在留資格認定証明書交付申請」で呼び寄せることはできません。
一旦、短期滞在として日本に入国してもらう必要があり、そこから、在留資格変更許可申請を行い、特定活動に切り替えるというイレギュラーな方法を取ることになります。切り替えの際には、事前に入管に事前相談し、変更申請を受理してもらうための承諾を得る必要があります。無事に承諾が得られましたら、指定の窓口にて申請を行いましょう。
短期滞在で呼び寄せる際には注意が必要です。
短期滞在には、15日、30日、90日の期間がありますが、必ず90日の査証を得る必要があります。
- 15日
- 30日
- 90日
通常、在留資格変更許可申請については、申請後から審査結果がでるまでの間は「特例期間」として本来の在留期限を過ぎても日本に合法的に在留することが許されています。しかし、15日や30日の短期滞在ビザの場合には、その特例期間の適用がないため、変更申請の審査に時間がかかってしまい、在留期限が来てしまった場合には日本を離れることになってしまうのです。特定活動への変更は約1~2か月ほどかかります。今回のようにイレギュラーで慎重な審査が必要な案件の場合には、さらに時間がかかることも考えられますので、心しておきましょう。
親を日本に呼び寄せるために必要な資料は?
特定活動(老親扶養)への変更申請の際には、通常の申請書などの書類の他に、以下の書類を証明書類として付けましょう。
- 他に身寄りがないことを証明する資料(配偶者の死亡証明など)
- 呼び寄せる「子」との親子関係を証明する資料(親族関係証明、出生証明、戸籍謄本など)
- 病状や障害を説明する文書(医師の診断書や入退院記録など)
- 扶養能力を証明する資料(世帯の貯金通帳、源泉徴収票、賃金台帳など)
- 扶養関係を証明する資料(本国への送金記録など)
医師の診断書は本国はもちろんのこと、短期滞在中に日本の医師にも診てもらいましょう。
専門的な意見として両国での診断書の結果が一致していれば、それだけ信憑性も高まり、許可の可能性が高まるといえます。
親を日本に呼び寄せるその他の方法
ここまで、老親扶養として特定活動(告示外)で呼び寄せる方法と、高度専門職の優遇制度として「特定活動(34号:高度専門職外国人又はその配偶者の親)」で親を呼び寄せる方法を紹介してきました。
その他に、親を日本に呼び寄せる方法はないのでしょうか?
日本での治療行為、人間ドック、健康診断、検診、歯科治療、温泉湯治を含む療養などの目的で日本を訪れる外国人患者であれば、医療滞在ビザでの日本滞在も認められています。この場合の滞在期間は原則90日以内ですが、病態によっては日本での入院前提で6か月や1年の滞在も可能です。この場合には、日本に居住する子などの親族によって、在留資格認定証明書交付申請を行うことになります。
また、呼び寄せたい「親」が比較的高齢でない場合には、親自身が就労系在留資格の要件を満たしているのであれば「技術・人文知識・国際業務」や「技能」や「経営・管理」などのビザを取得して入国する方法もあります。もちろん、この場合には在留資格ごとに定められた活動内容範囲に沿って、日本で活動をすることが前提となります。