外国人が日本で永住権を取得するメリット・デメリットとは
外国人が日本で永住権を取得するメリット・デメリットとは
永住と帰化の違い
今日は「永住ビザ」のメリットとデメリットについて、お話していこうと思います。
帰化とは異なり、母国の国籍を持ちながら日本に住めるビザは、帰化とはまた違ったメリット・デメリットがあります。
まずは、帰化との違いを見てみましょう。
永住 | 帰化 | |
---|---|---|
申請先 | 地方出入国在留管理局 | 地方法務局 |
平均審査期間 | 4か月~10か月 | 8か月~1年 |
国籍 | 外国籍のまま | 日本国籍になる (本国の国籍は放棄) |
活動制限 | なし | なし |
パスポート | 母国の旅券を継続使用 | 日本の旅券を取得可能 |
許可の取消 | 可能 | 可能だが前例なし |
国外への退去強制 | あり | なし |
再入国許可 | 必要 (再入国期限を守らないと永住権喪失) | 不要 (制限なし) |
在留期間の定め | 無期限 | なし |
日本の戸籍 | 取得不可 | 取得可 |
参政権 | なし | あり |
永住権を取得するメリット
永住者となる審査は非常に厳しいものですが、取得すると大きなメリットがあります。
今日は、そのうち主要なメリットについてご紹介します。
永住ビザを取得すると、在留期間が「無期限」となるため、日本にずっと安定して住むことができるようになります。永住者と高度専門職2号以外の在留資格では、「最長でも5年」と在留期間が定められているため、在留期限前に在留期間更新許可申請をして許可をもらう必要があります。日本を活動の拠点としている外国人にとって、在留期限のたびに書類収集や作成など、申請の準備をしなければならず、ストレスに感じることも多いと思います。この点永住権を取ってしまえば、在留期間の更新申請のストレスや不安から解放されることになるので、外国人の方にとって大きなメリットと言えます。
永住者となった後も、有効な在留カードを所持・更新し続ける必要がありますが、永住者の在留カード更新は通常の更新申請とは異なり、あくまでも形式的なものです。永住の在留カードは7年の有効期間が定められていますが、在留カードの有効期間を経過してしまっても、永住権そのものが消滅してしまうわけではなく、新しい在留カードを発行してもらうことができます。
永住ビザを取得すると、その他の在留資格で定められているような活動の制限がなくなり、公的機関(政府や警察署)への就労以外であれば、学歴に関連性のない職種の仕事に就いたり、自由に転職したり、会社経営をしたり、アルバイトをしたりと自由に活動できるようになります。
通常、就労系の在留資格(技術・人文知識・国際業務など)をお持ちの方の就業先は、大学や専門学校で専攻した内容と従事する職務内容との間に相当程度の関連性が必要となります。また、退職の際には、3ヶ月以内に現在の在留資格に適合した転職先に就業するか、他の要件を満たせる活動を開始して在留資格の変更申請を行う必要があり、それを怠ると在留資格の取消対象となってしまいます。
また「経営・管理」ビザで起業する場合には「資本金または出資の総額が500万円以上」もしくは「2人以上の常勤(日本人や永住者)の職員」が法律上の要件のひとつとなっていますが、永住者の場合には日本人と同様に1人でも、資本金が少額でも起業できることになり、企業がしやすくなります。
就労制限がない在留資格には、永住者の他に、
- 日本人の配偶者等
- 永住者の配偶者等
- 定住者
がありますが、配偶者ビザをお持ちの場合にその配偶者が離婚・死別して日本で居住できる根拠を失った際には、在留資格を維持するために再婚するか、他の在留資格に変更するなど対応が必要となり、いずれの在留資格要件も満たせない場合には帰国を余儀なくされてしまいます。
一方、永住を取得すれば離婚しても永住が取り消されることもありません。このように、永住資格を取得すると、日本における活動の自由度が格段に高くなりますので、今後のライフプランの選択肢も大幅に広がることになります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。また、大手銀行などは、銀行で口座をつくったりも自由に行えないこともあります。
永住権をもつということは、日本で長期間にわたって素行善良に過ごし、生計要件を満たし、我が国の国益に適合すると認められた証拠になりますので、社会的信用度が格段に上がります。
在留期限のある在留資格の場合、不許可になったら帰国してしまう恐れが常にあるため、住宅ローンを組んだり、融資を受けたりするのは容易ではありません。その点、永住者は社会的信用が高いので、日本人と同じようにローンを組んだり、融資を受けたりすることも認められやすくなります。
永住ビザは取得しても国籍が変わるわけではないので、パスポートもいままでどおりのものを持ち続けることになり、母国への帰国は問題なく行うことができます。一方、帰化の場合は国籍が日本になるため、母国へ帰国するのにも手続きが必要になります。
永住の場合、あくまで国籍は変わらないため、万が一退去強制事由に該当してしまった時は母国へ強制的に帰ることになり、また、その後最低でも何年間かは来日できなくなってしまいます。しかし、永住権を取得していると法務大臣の裁量により在留特別許可が得て引き続き日本で暮らせる可能性が他のビザよりも高くなります。このことは、出入国管理及び難民認定法50条1項1号の「法務大臣の裁決の特例」として明記されています。
法務大臣は(中略)当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
1.永住許可を受けているとき。
出入国管理及び難民認定法50条(法務大臣の裁決の特例)1項1号
2.かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
3.人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
4.その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
また、他の在留資格と比べても、永住ビザを得ると大きなメリットがあることが分かります。
永住者 | その他就労系・活動資格 | その他居住資格 | |
---|---|---|---|
活動制限 | 制限なし | 制限あり | 制限なし (但し身分・地位を有する者としての活動を逸脱できない) |
在留期間 | 制限なし | 制限あり (高度専門職第2号除く) | 制限あり |
再入国 | ・再入国許可期間最長5年 (海外延長1年) ・みなし再入国許可1年 | ・再入国許可期間最長5年(但し在留期間満了日迄)海外延長1年 ・みなし再入国許可1 年(但し在留期間満了日迄) | ・再入国許可期間最長5年(但し在留期間満了日迄)海外延長1年 ・みなし再入国許可1 年(但し在留期間満了日迄) |
在留カードの有効期限 | 交付の日から7年間 16歳未満の者は16歳の誕生日迄 | 在留期間満了日まで 16歳未満の者は在留期間の満了日or16歳の誕生日いずれか早い日迄 | 在留期間満了日まで 16歳未満の者は在留期間の満了日or16歳の誕生日いずれか早い日迄 |
在留資格に応じた活動を 行っていない場合の在留資 格の取消の有無 | なし | あり ・在留資格に応じた活動をしていない+他の活動を行っている場合 ・在留資格に応じた活動を3月以上行っていない場合 | 配偶者ビザで6月以上実態がないと判断された場合 |
永住権を取得するデメリット
永住権を取得すると、社会的な信用が増し、日本での活動の幅が広がり、選択肢は格段に増えますが、それでも完全に自由に活動できるわけではありません。次は、永住権取得のデメリットと呼べるものをご紹介します。
永住者の活動拠点はあくまで日本である必要があります。そのため、長期で出国する場合には出入国在留管理局で再入国許可の手続きをする必要があります。再入国許可で認められた期間内に日本に戻らない場合、または、再入国許可を取得せずに1年以上出国した場合には、永住ビザが失効しますので十分に注意する必要があります。
永住者はあくまで日本で無期限に活動できる外国人という扱いなので、母国にいる時も外国人として活動内容が制限され、滞在日数に規定があればそれに従わなければなりません。
憲法15条には、公務員を選ぶことは「国民固有の権利」と書かれており、この解釈上、外国人は国政選挙で投票できる選挙権や選挙に出馬して選ばれる被選挙権は認められていません。また、憲法だけでなく、公職選挙法でも、選挙権・被選挙権は「日本国民」に限定されており、今のところ「外国人参政権」は認められていません。永住ビザを持っていてもあくまで国籍は「母国」であり、永住者という在留資格を法務大臣に許可された外国人に過ぎないため、他のビザと同様、参政権を持つことはできません。
各自治体ごとの地方政治の住民投票に関しては、憲法や公職選挙法ではなく各自治体ごとに条例で決めることになっており、「外国人による投票」を認めている自治体がありますが、外国人として参政権が認められるのはまだまだ先のことと考えてよいでしょう。
帰化については、許可された後に取り消された例はいままで一度もありませんが、永住者の場合には、他の在留資格と同様に永住資格が取り消されることがあります。例えば永住の申請の際に虚偽の書類を提出して不正に永住許可を得た場合などには永住権が取り消されます。また、何か重大な問題を起こした場合には退去強制処分の対象になり、母国へ強制送還される可能性もあります。他の在留資格と比較すると、永住者は退去強制処分の際にも寛大な処分となることもありますが、それでも帰化とは異なり、退去強制処分の対象になることには変わりありません。