永住申請必要書類に新しく追加された了解書について
永住申請必要書類に新しく追加された了解書について
了解書ってなに?
永住申請は、審査にかかる標準処理期間が約4か月と公に発表されていますが、実際は6か月~10か月くらいかかる方も珍しくありません。
参考までに弊所がサポートした案件で平均を算出すると約134日でしたが、2021年以前と比較すると審査が厳しくなっているためか、平均審査期間は長くなっていました。また、申請してから100日ちょっとで許可を得た案件もあれば、半年以上かかる場合もあります。
申請人の状況によって大きく変動しますので、一概には言えないものですが、書類の作成や収集にかかる準備期間を含めると半年から1年くらいは永住申請に労力や時間を費やすことを覚悟する必要がありそうです。
審査結果がでるまで時間がかかるということは、審査期間中に申請者の状況が変わってしまったということもありえますよね。
そのため、「申請時点から状況に変化があった場合には、出入国在留管理局まで速やかに連絡をすること」を誓約する書類として、「了解書」の提出が2021年10月1日から新たに必要書類となりました。
入管ホームページには各国の言語ごとにフォーマットがありますが、ここでは、日本語版と英語版を載せておきます。
了解書(日本語)
Acknowledgment Form(English)
了解書は、各項目を良く読み、日付と申請者の署名を記入するだけで完了です。
申請番号欄には何も書かないで提出してください。
また、家族滞在の方などと同時申請する場合には、人数分用意する必要があります。
何を了解すればいいの??
了解書の冒頭には、次のように書かれています。
私は、永住許可申請に際し、審査結果を受領するまでの間に以下の点について変更が生じた場合には、速やかに申請先の出入国在留管理局に連絡する必要があることを了解しました。
つまり、永住申請を行った後~審査結果がでるまでの間に申請人の勤務先や家族の状況など申請内容に関する状況が変わってしまったら、審査にも影響がありますよね。
審査している内容と実態が違うと虚偽になってしまいますので、その期間中にやむを得ず変更があった場合には、「すぐに永住申請した出入国在留管理局まで連絡すること」に了解してください、といった内容の書類なのです。
具体的には、次のような変更があった時に連絡することになります。
- 就労状況に変更があったとき
- 家族の状況に変更があったとき
- 税金や社会保険料等の納税・納付状況に変更があったとき
- 生活保護等の公的扶助を受けることになったとき
- 刑罰や法令違反で刑が確定してしまったとき
ひとつずつ見ていきましょう。
就労状況に変更があったとき
たとえば、勤めている会社を退職したり、転職した場合には、速やかに永住申請先の入管に連絡する必要があります。永住許可の重要な要件のひとつに「独立生計要件」があります。この要件では、永住申請者が、過去から現在に至るまで実績として安定した収入があり、将来にわたっても自立して生活を送れることが求められています。もしも審査中に退職してしまった場合には、安定した収入を得られる保証がなくなってしまいますので、なぜこのタイミングで退職しなければならなかったのか、また、今後どうするのかといったライフプランとともに、改めて説明をする必要があります。
審査中の転職についても速やかに連絡する義務が生じます。審査中の転職はおすすめできませんが、人生においては色々なタイミングがあると思いますし、キャリアアップ転職などの場合には、まだ審査官を納得させられる可能性もあります。ただし、転職後1年勤続していない場合にはどうしても「安定性」が疑問視されたり、新しい勤務先についての追加書類の提出や説明が求められたりと、労力や負担が大きくなりますので、基本的には、永住審査の結果がでるまでは、転職はおすすめできません。
参考までに、転職してしまった場合に追加書類として提出すべき転職先の情報・書類については以下のようなものが考えられます。入管側から追加資料の提出依頼が来る場合が多いとは思いますが、そのまま弁明の機会もなく不許可になることも考えられますので、自発的に説明文とともに追加資料を提出するか、少なくとも追加質問等に備えて準備だけはしておいた方がよいでしょう。
- 在職証明書
- 雇用契約書・雇用条件通知書
- 会社概要が分かる書類
- 任意資料提出の理由書
- 就労資格証明書
- その他、年収見込みや賃金が分かる書類など
家族状況に変更があった場合
たとえば、永住申請後~審査結果が出るまでの間に、配偶者と離婚してしまったり、死別してしまった場合にも、速やかに入管に報告をすることになります。家族状況に変化があると、扶養関係なども変わってくるため、審査に影響が生じます。
そして最も問題があるのは、居住要件の特例を使っている場合です。「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」の配偶者ビザから永住申請をしている場合、原則10年日本に継続して住んでいなければならないという居住要件が最短1年になり、さらに、配偶者の場合には永住許可の3要件のうち2つ(素行善良要件と独立生計要件)が問われなくなるなど、大幅に要件が緩和されます。
配偶者という前提がなくなってしまうと、緩和された要件をつかえなくなってしまいますので、審査にもかなり重大な影響を及ぼします。もちろん、死別や色々な事情により離婚したのであればやむを得ないので、入管への連絡だけは忘れずにするようにしましょう。
原則&特例 | 日本居住要件 |
---|---|
原則 | 10年以上 |
日本人の配偶者 永住者の配偶者 | 1年以上(+3年以上の婚姻生活) |
日本人の実子 永住者の実子 | 1年以上 |
日本人の特別養子 永住者の特別養子 | 1年以上 |
また、同居していた家族と別居することになった場合や、逆に同居する方が増えた場合なども連絡する必要があります。永住申請は、特に慎重な審査が行われますので、聞き取り調査や訪問調査も行われることがあります。申請書や提出書類の内容と実態が一致している必要がありますので、書面上は住んでいないはずの人が住んでいたり、同居しているはずの配偶者がいないので、婚姻生活の実態がないのではないか?などと疑われないよう、何か変更があればすぐに連絡することが重要です。
税金・年金保険料及び医療保険料の納付状況について、申請時点から変更が生じた場合
永住許可要件のひとつに国益適合要件というものがあり、日本国の利益に適合しているかどうかが判断されます。住民税等の納税や年金等の納付は、国の利益となっているかどうかが直接的に判断されるため、永住審査結果に重大な影響があるといえます。
申請までの間はもちろんのこと、永住申請が受理されて審査が始まってからも、滞納や納期限を遅れてしまった場合にはそれが理由で不許可になることがありますよ、という意味なので、期限通りに支払を行うようにしましょう。
そして、万が一納期限を過ぎてしまった、滞納してしまったときには、すぐに支払い、その上で怠りなく入管への連絡をしましょう。
生活保護等の公的扶助を受けることとなった場合
生活保護を受けている場合には、一定以上の安定した収入が求められる「独立生計要件」を満たしていないことになりますので、不許可となる可能性は高まりますが、これも永住申請中にやむを得ず生活保護を受けることになった場合には速やかに連絡が必要です。その経緯や今後のことなども含め説明を行いましょう。
刑罰法令違反により刑が確定した場合
永住許可要件の要件のひとつに「素行善良要件」というのがあります。具体的には、永住者となるものには、「日本や外国の法令に違反して懲役・禁固・罰金などの刑に処せられていないこと」が求められており、日常生活・社会生活の両面において、他人に迷惑をかけず、法令順守して生活することが要件となっています。
また、罰金や懲役刑を受けていると日本国の利益に適合しているとはみなされず、「国益適合要件」の観点からも永住審査に不利に働きます。万が一、永住審査中に刑罰法規に触れる行為を行い、刑が確定した場合には、その犯罪の内容や処分(刑)について説明しなければなりません。
了解しなかったらどうなるの?
了解書の締めくくりには、こんな分が書かれています。
事情の変更について連絡しないまま永住許可を受けたことが判明した場合、当該永住許可が取り消されることがあります。
つまり、前項でお話した「就労状況」や「家族状況」、「納税・納付状況」などに変更があったにも関わらず、それを入管へ連絡しなかった場合には、たとえ永住許可をだしたとしても取り消されてしまう恐れがありますよ、と結構怖いことを言っています。
つまり、変更があった場合には、実質的には必ず報告する必要があり、「了解しない」ことはできないということですね。
了解書の他にどんな書類が必要なの?
現在の在留資格(ビザ)や世帯・扶養の状況、サラリーマンなのか経営者なのか…などなど、申請人をとりまく様々な状況によって、必要書類・提出すべき書類は変わってきます。
下記リストは、永住申請を受理してもらうための最低限の必要書類のうち、共通して必要な部分だけを抜き出して紹介しています。個人ひとりひとりの状況に応じた「提出すべき書類」については個別にご相談ください。
- 永住許可申請書
- 証明写真
- 賃貸契約書のコピー
- 理由書
- 住民票
- 身分関係を証明する資料
- 職業を証明する資料(在職証明書など)
- 所得や納税状況を証明する資料(課税証明書・納税証明書など)
- 公的年金の納付状況を証明する資料
- 公的医療保険料の納付状況を証明する資料
- 資産を証明する資料(預金通帳のコピー)
- パスポート
- 在留カード
- 身元保証書
- 身元保証人の身分証明書