永住申請に必要な理由書の書き方は?
永住申請に必要な理由書の書き方は?
そもそも理由書の提出は必須なの?
永住申請の場合、「日本人の配偶者等」や「永住者の配偶者等」など配偶者ビザからの永住申請の場合は理由書は必須資料ではありませんが、就労系のビザや家族滞在、定住者などから永住申請をする場合など、ほとんどの場合は理由書が必須書類となっています。
形式的な書類だけでは、永住許可が必要な理由を審査官に伝えることはできません。
今日お話しするポイントを押さえて理由書をつくることで、許可の可能性はぐっと高まります。
弊所にご依頼いただいた場合には、配偶者ビザからの永住申請の場合でも理由書を作成します。
ビザ申請は現在の状況で最大限まで許可の可能性を高めることが重要です。
理由書には何をどのくらい書けばいいの?
基本的に、理由書に何を書くかは決まっていないため、自由な形式で書いて良いことになっています。ただし、日本語以外の言語で理由書を作成する場合には、日本語の翻訳文を付ける必要があります。永住申請においてはA4サイズの紙1~2枚程度に納めるとよいと思います。
自由に書いて良いのですが、理由書の目的を把握しておくと書きやすいと思います。
理由書作成の目的は、例えば次のようなことが挙げられます。
- 永住要件を満たしていることを文章でも伝える
- 永住許可を必要とする理由を審査官に伝える
- 提出書類では伝わりきらない申請人の状況、申請に至った背景などを補足的に説明する
- 日本に永住することへの熱意も加味して審査官に審査してもらう
- 提出できない必須書類や満たしていない要件があれば、合理的理由を説明する
- 申請にあたって不利な事実を予め伝え、それに対するリカバリーをする
以上の目的を念頭に置きながら、次の構成に沿って書き進めることで、まとまった理由書に仕上げていくことができます。
理由書の構成
申請者の状況によっても異なりますが、
永住許可申請の理由書の基本的な構成は以下のとおりです。
タイトルは「理由書」「申請理由書」「永住許可申請理由書」などとしましょう。宛名は「東京出入国在留管理庁殿」「○○出入国在留管理局長殿」が一般的ですが、「法務大臣殿」でも問題ありません。表紙は特に必要ありませんので、タイトルに続けて、国籍と名前などを導入部分を簡潔に書き、内容に入りましょう。
出生から(もしくは高校卒業後あたりから)現在までの申請人の略歴を、年月順に記載しましょう。どこで生まれていつ来日し、どんな学校に進学してどこで勤務しているか、転職歴がある場合は転職した年月、結婚・離婚をされている場合は届出の年月日など時系列で分かりやすく書きましょう。アピールできる資格を持っている場合は、それも書き添えておきましょう。長くなりそうな場合には履歴書にまとめてて別途添付し、理由書ではその内容を補足的に説明すると、審査官が読みやすいと思います。
就労系ビザからの永住申請の場合など、現在仕事をしている方であれば、現在の勤務先、従事している業務内容、どのような事業を行っていて、どのような立場なのかなどを書きます。経営しているのであれば、経営している事業の内容、経営状況、今後の展望などについて記載しましょう。配偶者ビザからの永住申請の場合などには、配偶者の仕事の内容や生活状況などについて記載し、善良な生活を送っていることや安定した生活を問題なく送れていることなどを審査官に伝えましょう。
申請理由は最も重要なパートです。全体の半分以上をこのパートに費やしましょう。日本の好きなところ、日本の良いところ、日本に永住したいという理由、日本で継続的に活動しなければならない理由をできるだけ具体的に書きます。
その他、身元保証人の紹介、公的義務を適正に履行していること、年収や生活的な安定が保たれており、経済的な心配がないこと、その他要件を満たしていることをアピールしましょう。
全体的なまとめとして、生活の基盤が日本にあり、今後も日本の法律を守り、会社の発展に貢献していく旨の宣誓と、といった点が挙げられます。許可のお願いをして、日付と申請人の名前を記載し、文章を結びましょう。
テンプレートを使って理由書を作成するリスク
理由書の内容によっては、逆に不利に働く場合があります。
近年、インターネットや書籍などで永住申請理由書のテンプレートが溢れかえっていますが、画一的な内容は望ましくありません。永住申請の理由は、申請人によって違うはずです。理由書には、現在の活動内容やその人の思いなどが反映されたものであるべきだからです。
理由書の内容が同じであることは以前から問題視されています。要点をおさえた理由書の作成は専門家でないと難しいとは思いますが、テンプレートをそのまま使用して理由書を提出する行為は審査官の心証を悪くするため、やめておいた方が無難です。
どのような不許可リスクがあるのか、まとめてみました。
- 過去の申請と矛盾が生じやすい
- 個別の事情に触れていないため、具体性に欠ける
- 説明すべき要点が網羅されていない
- 日本語文章がめちゃくちゃで日本で生活できるのか疑問
- 提出書類の補足説明がなされていない
- 不備のある理由書によって逆に申請内容の信憑性を疑われる
- 熱意が文章から感じられないため、印象が悪くなる
- 予め伝えるべき不利な事実に触れていないため、審査中にその事実が判明して心証が悪くなる
上記は、すべて永住不許可につながる可能性を孕んでいます。
理由書のほころびから申請内容に疑義があると判断された場合には、追加で説明や資料の提出を求めることなく不許可とされることも少なくありません。許可不許可の決定を下す審査官は人間ですので、心証が許可・不許可に大きく影響があるという前提で、リスクを理解し、理由書を作成に臨む必要があります。
なぜ日本語じゃないとダメなの?
日本語って難しいですよね。私も、日々文章を書く中で、日本語の難しさは痛感しています。
理由書はなぜ日本語でないとダメなのでしょうか?それは、審査官が日本語で読むからです。
母国語でも良いけど日本語の翻訳文を必ずつけさせるということから、次の2つのことが分かります。
- 理由書は必ず読まれる(許可不許可に確実に影響する)
- 翻訳文(日本語)の方だけ読まれる可能性がある
10年以上日本に住んで働いている方に「母国語で書いてもいい」という理由は、日本語能力の方に重きを置いている訳ではなく、申請人の永住への熱意や本心を知り、日本に住み続けたい理由を知りたいからです。「ただし、日本語の訳文を付けてくれ」ということから、理由書は審査官があくまで日本語として目を通すことが分かります。日本語として読むのが確実であれば、それは、単に機械翻訳されたものでは意味がありません。日本語としてより読みやすい方が伝わりやすく、その内容は許可不許可の判断の一端になるという意味です。
特に日本語は感覚の言語なので、敬語の使い方や助詞などの文法など、細かいニュアンスの違いで間違ったふうに伝わったり、ということはよくあることだと思います。日常生活での言い間違いは大した問題ではないことがほとんどですが、ビザ申請の理由書においてはちょっとした違和感が誤解を生み、不許可につながる可能性があります。
日本語が得意でない方は、母国語で原文を書き起こし、翻訳・添削をしてもらうか、専門家に日本語で代筆してもらうことをお勧めします。熱意や誠意が伝わる理由書を仕上げて許可につなげましょう。